Memory of blood～Shining Diamond～22 (ページ38)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:35,564 hit

黒い影、そしてページ38

エスクプス視点

ジョンハンが戻って来たのは2時間後だった。爆弾を乗せた車を500m動かすのは思った以上に神経を使ったうえに、吹雪の中歩いて戻ってくるのにさらに体力を消耗したからだ。戻ってきた彼の体がすっかり冷え切っていた
二人でバーノンの体を抱き締めるようにして、その時を待った。治癒が出来ないので、背嚢にあったキットで最低限の手当てをしただけだ。寒さと出血で衰弱していくのがわかる。眠りそうになるのを必死に叩き起こし、わずかな携帯糧食と水で耐えること10時間以上が経過した
JH「クプス、時間」
「……もうそろそろだな。バーノン聞こえるか。しっかりしろ」
血の気の引いた頬を軽くたたくと、バーノンがうつろな目を開いた
VN「……ン…ショーン？」
「馬鹿言え、あいつは基地でお前の帰りを待ってる。もう少しの辛抱だ。おいしっかりしろ」
JH「クプス、口こじ開けろ」
俺がバーノンの口に指をねじ込んで何とか開かせると、そこにジョンハンが何かを押し込んだ。チョコレートだ
JH「バーノンの背嚢に入ってた。ベルがいつも入れてるんだよ。チョコ好きだからねこいつ」
「ベルの愛が救ってくれるよ。ガラス玉くれ」
ジョンハンは背嚢に手を伸ばし、ガラス玉をひとつ寄越した。俺はそれを握り込み、テントの中心にぽつんと置かれた特殊ケースを見つめる。その中にウランが入っている
VN「…ショーン」
JH「もうすぐだよバーノン、もうちょっとの辛抱だ」
VN《痛くない……でも寒い…ショーン手を繋いでよ…》
意識が遠のいているのか、英語で何かつぶやいている。ジョンハンが手袋を外してバーノンの右手をしっかり握った。俺はバーノンの体をジョンハンに預け、二人の前にしゃがみ込む

よく目を凝らさなければ気付けないほどの一瞬、黒い影がケースを包み込んだ

「―――掴まれ！！」
俺は二人に覆いかぶさり、ガラス玉を強く強く握った

JS「―――クプス！！エスクプス！！」
パッと目を開けると、そこは見慣れた基地の野外訓練場だった。ジョシュアが俺の肩を強く揺さぶっている。ふと横を見ると、ディノがバーノンの体を浮かして運んでいた
「…どうなった」
JS「成功だよ、予知は大幅に改変された！！大成功だ！！クプスたちは世界を救ったんだぞ！！」
凍り付いていた五感がだんだん戻ってきた。そこでようやく、あたりがうるさいほどの歓声に包まれていることに気がついた
JS「聞いてる！？お前のおかげだよ、ウランは“消えた”んだ！！」