肝っ玉と観察力 ページ22
スングァン視点
『スングァン、5万ずつ乗せろ』
「…105万!!」
「120万」
相手の反応が早い。携帯で指示を受けながらも、僕をじっと観察しているようだ。冷や汗が流れる。すると司令が言った
『落ち着け。ウォヌのふりして攫われたフリークに拷問されてもひとりで切り抜けたんだぞ。お前なら大丈夫だ』
「……135万!!」
『そのままあげろ。自分が今候補生じゃないことを思い出せ』
こういった倉庫はあたりがあれば儲けものだが、外れが多い。そうなれば高い金を払っても損をするので、値が釣り上がるとだいたい皆諦める。諦めないのは“中に何が入っているかを知っている人間”だけだ
無線で連絡が入った。ジョンハン兄だ
JH『お前と競ってるそいつに接触できない?ゆすり屋の態で』
『ジョンハン、策があるなら前もって言え』
JH『倉庫の中で3時間待機させられてて外の状況見えないんだからしょうがないでしょ。値を釣り上げたってことは倉庫の中身がなきゃ困るってことだよ。それなら…』
買収も辞さない。話を持ち掛けて乗ったらビンゴだ。僕は場所を移動して競争相手の男に近付いて言った
「どうしてもこの倉庫が欲しいんですか」
「…悪いが依頼主と電話中だ」
「話すつもりがないならそれでいい。倉庫は貰う。170万!!」
「…ッ待て」
男が僕の腕を引いて耳打ちした。周りに聞かれたくないのだろう
「700万出す。手を売ってほしい」
「……競売が終わった後、皆が帰ったらここで」
「いいだろう、175万!!」
僕が倉庫のオーナーに首を振ってみせると、彼は手を叩いた
「175万で落札だ。じゃぁ他のお客さん達は帰ってくれ。競売はこれで終わりだ」
周りは思いのほか白熱した競争が面白かったのか、ひそひそと話しながら去っていく。無線で司令がくつくつと笑っている
『お前演技力はないけど、肝っ玉と観察力はたいしたもんだよな。やるじゃないか。えらいぞ』
褒められたことに緩みそうになった頬をに力を入れ、競り勝った男に声をかけた
「今ここでもらえるのか?」
「いや、連絡先をくれれば後日手渡す。現金でいいな」
「何だっていいよ。欲しいのは700万じゃないからさ」
ぎょっとして振り返った相手に僕は銃を突きつけた。変身を解くと同時に倉庫のシャッターが中から開く
「なっ…何だ」
JH「グァニ、携帯奪え。サポート基地だよ。逃げてもいいけど、外に狙撃が得意なやつが待ってるよ」
ジョンハン兄が口の端を曲げて笑う
JH「色々吐いてもらうぞ…覚悟しとけ」
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2018年2月19日 23時