偽装競売 ページ21
スングァン視点
「うまくいくかは賭けだけど、なかなかいい発想だ」
司令はそう言ってPCを覗き込んだ。ある貸し倉庫の廊下に仕掛けた監視カメラを見て、競売のために集まった人たちをチェックしているらしい
貸し倉庫というのは月にいくらか借り賃を払う。払えなければ中のものは競売に出される。要はオークションだ。そういうところにはお宝や掘り出し物を狙う人や、脅迫ネタを探す強請り屋のような人も来る。僕たちは貸し倉庫業者に協力を依頼し、例の悪徳業者が僕たちに逮捕されたせいで貸し倉庫が競売にかけられたように見せかけたのだ
「…あぁ駄目だ、別の顔にしろ」
「えー？いかつい方がいいと思ったんですけど」
基地の戦闘員は司令をはじめ若者ばかりで、こういった潜入捜査では難儀する。そこで僕が過去に出会った犯罪者から適当な人の容貌を借りて変身するのだが、司令は首を振る
「こういった競売に興味を示す中にはゆすり屋が多く紛れてる。それも直にあって脅迫なんてしない、手紙やメールで姑息な手を使うもんだ。もっと詐欺師っぽい、卑屈そうな感じ悪い野郎に変身しろ。女でもいいがお前演技力微妙だからな」
「そんなのいたかな…」
必至に過去の任務で会った人たちを思い返しながらあれこれ変身を繰り返していると、耳元の無線が鳴った
VN『グァニ、そろそろ時間だよ』
「すぐ行く。司令、時間ですって」
「うん。いいか手筈通りに、お前は値を釣り上げて競る相手を一人に絞れ。そいつが今回のターゲットだ。どうせ偽の競売で金は必要ない。いくら釣り上げてもいいが釣り上げ方に気をつけろ。罠だとばれる。ギリギリのところで競り負けろよ」
「了解」
僕はバンを降りて貸し倉庫に向かう。競売にかけられる倉庫の前に人だかりが出来ていた。オーナーに目配せすると(僕が変身血族だとは話してある)、彼はベルを鳴らした
「競売を始める。10万ウォンからだ」
すぐに周りのものが値を釣り上げ始めた。少しずつ値が上がり、24万に達したところで僕が手をあげる。ここで競争相手を一気に減らしたい
「よっ…40万！！」
「40万が出たぞ、さぁお次は！？」
内心ドキドキしながら競争相手を確認していると、耳の無線に司令のドスの利いた声が流れてきた
『噛むんじゃねーよばれんだろうが……まじめにやれ』
真面目です！！と叫びたい。だが僕の向かい側にいる男が電話で話しているのが目に入った。そして男が手をあげる
「100万」
こいつだ、という声が耳にながれてきた
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
