幸せの基準 ページ3
エスクプス視点
「俺に言いたくないことかもしれないけど、捜査官として話してほしい。何されたの」
ウンビさんを連れてファミレスに入り、適当に注文してから話を切り出した。彼女はしばらく逡巡し、やがて腹を括ったように言った
EB「あの人、変なプレイ要求してくるんだよね」
「ふぶっ……げっほ、ごほぉっ」
あの祖父にしてこの孫ありだ
EB「嗜虐趣味っていうのかな……ちょっとこっちが引いたのがわかったんだろうね、一度帰りの車の中で持ち込まれそうになっちゃって」
「逃げたんだろうな！！」
EB「どうしても怖いって懇願して逃げたよ。次の日ラインで“酔って酷いことした、ごめん”って。まぁ趣味が合わないっていうのはしょうがないと思ったんだけど、それ以来なんかこっちの腹を探られてる気がしちゃって」
「まずひとつ、意向のすり合わせが出来ていない段階で“持ち込む”のはただの犯罪だ。それともうひとつ、酒を飲んだ状態で恋人を助手席に乗せて運転出来るやつはアウトだ」
どうにも納得がいかない。彼女はあの店で店員をして長いし、客を長年見て来て観察眼は備わっているはずだ。実際俺のこともいくつか言い当てた。それなのになぜ彼氏となるとこうも目が曇るのだ
EB「…私の両親のこと、お爺ちゃんに聞いた？」
「…いや」
母親がよそに家庭を持ったとは聞いたが、詳しくは知らないので嘘じゃない
EB「父が刑事でね、ある時犯人に撃たれて植物状態になっちゃったの。母も最初は献身的に世話してたけど、すぐに来なくなった。忙しいって」
浮気はその前からだったのだろう。刑事の仕事は激務で家庭と溝を作りやすい
EB「父の面倒を見てたのは私とお爺ちゃんだけ。だからお葬式で責めちゃって……言われたんだ、何で幸せになっちゃいけないのって」
妻というだけで。母というだけで
「お母さんよりも幸せになってみせたかった？彼氏の基準は“母親”だね」
EB「母が父を捨てて選んだ人よりもずっといい人と幸せになれば、見返せるかなって」
「それはたぶん無理だと思うよ。お母さんは君やお父さんを捨てたことを後悔しない」
他人と比較した時点で、それは幸せじゃない。それはおそらく相手も見抜く
「本当に幸せな相手と出会えたら、たぶんウンビさんはお母さんのことなんか忘れる。幸せな人は他人の幸せなんて眼中にない」
EB「じゃぁどうすればいいの？何が正解？」
「親なんかに期待するのが悪い。子供がいくら傷付こうと、裏切るときは裏切るもんだよ」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
