ひまわりとチューリップ ページ12
スングァン視点
「…司令〜」
「……」
「あのぅ」
取調室を出てから伺うように声をかけてみると、司令はむっとした顔で僕の頭を捜査ファイルで叩いた。軽いから痛くはない
「何が言いたいか手に取るようにわかるな、声音で。言っておくが寝る気はないぞ」
「だって司令、過労って診断されたんでしょ？今まで強情に働き方変えなかった司令が、週1の休日を受け入れたんだもん。絶対重度の過労だよ」
「そこまで酷くはない。重度になる前に休めとレイ先生に言われたってだけだ。実際仕事を部下に回すようになって負担も減ったし、これ以上休むわけにもいかん。心配しすぎだ」
そう言われれば食い下がることも出来ない。悶々としていると、司令が溜息をついた
「言いたいことがあるなら言え。聞くぞ」
「……バーノンにとってご両親はなじみのない存在なんです。すごく大事にしてくれるけど、感覚としては里親に近い。悲しいことだけど、10数年のブランクは大きすぎる」
「俺に何の関係がある」
「あいつにとって最初の“親”は司令です」
ロシアの実験施設には当然“親”なんていない。いたのは冷酷な科学者たちと、一度は優しさを見せたもののすぐに刻印に囚われてしまったキュヒョンさんくらいで、唯一の希望がベラミー兄だった。そのひまわりも、彼らは摘み取ろうとしていた
「バーノンが不安がってる。皆そうです。もう聞き飽きただろうけど、今司令を失ったら僕達平気じゃいられない」
「だから共倒れにならないよう正規戦闘員を4人も増やして、俺自身治療を受け入れたんだ。それに俺は親らしいことなんてしたことはない。監護権を持っているだけのただの上司だ。親としてお前達を慈しんでやるつもりもない」
「もし本当にそうなら、あのひまわり畑をわざわざ作ってあげたりなんてしない。あの2人、親からもらったクリスマスプレゼントみたいに、暇さえあれば嬉しそうに眺めてる。それにサムエルが言ってた……バーノンとベル兄があげたチューリップが寿命迎えても鉢植えを窓際に置いたままにしてるって」
今までの司令なら、バーノンの前でベラミー兄を撃ったからといって心を痛めたりしない。ベラミー兄とエスクプス兄に試合させたりなんてしない。そもそもイギリス支部からヒョンを引き取ったりなんてしなかったはずだ
「司令が上司として接しているつもりで取った行動でも、僕達にとっては愛情です。司令が僕達を案じてくれるように、僕達だって司令のことが心配なんだ」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
