雑巾兄弟 ページ11
スングァン視点
「その場で調書取ったのかあいつ……まったくこんなボロ雑巾みたいなの寄越されても困るんだよな。おい、おいあんた起きろ。ほんとに治癒したんだろーなあいつ」
司令はそう言って半長靴のつま先で不動産屋をつつく。男には一見いっさいの外傷がないが、逆にそれが怖い。だってさっきから泡を吹いたままピクリとも動かない
「まぁいい。調書によるともともとあの土地には一つの建物が建っていたらしい。だが前の前の持ち主ががヤバいところからの借金を返すために銀行で借金して抵当に入り、そいつ自身刑務所に行く寸前でドロンしやがったおかげで建物は宙ぶらりんに。そこへこの雑巾の兄貴が運営する建設会社が入ったと」
「でもおかしくないですか？普通銀行から借りられなくなってからヤバいところに行くでしょ。ソウルで地代も高いとはいえあそこ抵当にして銀行で借りられる額なら最初からそっちに行きません？ドロンとか言って、今頃漢江の底かも」
「そりゃ最初の家主がギリギリまであの家を手放したくなかったからだな。ヤバいところってのは最初は何の担保もなく貸してくれることがある。どうせ最終的に身ぐるみ剥ぐんだからその方がいい。あの地下には面白いもんが埋まっていたようだ」
司令はそう言って写真を見せてくれた。100丁近い拳銃に自動小銃、短機関銃、ランチャーなどもある。別の写真にはラップでぐるぐる巻きにした現金だ
「……ヤバいとこの跡地に建てちゃったね、イェウンさんたち」
「正確に言うとその前、最初の家主の次の家主だ。イタリアンをやっていたそうだがこの辺じゃ新しい店の80％が半年で潰れる。ソウンさんほどの才覚がなかったおかげで早々に手放す羽目になり、次の家主がイェウンさんたちだ」
最初の家主が土地を手放した際、“雑巾”とその兄は地下に埋まる危ないお宝に目をつけた。掘削し掠め取ったはいいものの、床下にはごっそり穴が開いた。もともと地下室がなかったのだから当然だ。もともとあくどいと噂があって目をつけられていたこともあり、地下室を作るためだと嘘をついた
「だが当時そいつら自身負債を抱えていて、現金はそっちにあてた。銃なんて売る伝手はないからすぐに金は作れない。資金不足のために適当にコンクリ流し込んで鉄筋代はケチったんだと」
「あほですねぇー」
「今こいつの兄貴もジョンハンが引っ張ってる。たぶんそいつも雑巾になって来るんだろう。イェウンさんもつくづく不運な人だ」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
