耽溺 ページ6
僅かに胸が突っかかる感覚。なんと言えばいいのだろうか、小骨が喉に痞えて取れないような、ぎこちなさ。昨夜のグリムの発言が未だに私の心の中に居座っていた。モヤモヤした気持ちは授業中にも、昼食中にも残り、結局放課後まで持ち越してしまった。
「何かあったのか？不思議そうな顔をしている」
「え、いや…まぁ、その……」
図書室でいつも通りジャミル先輩の隣の座った途端、そう問いかけられた。そんなに悩み込んだ顔をしていたのか。そんなことを思いながら問われたことには答えないと、と昨日グリムに言われたことが引っかかっていると少し省略して先輩に伝えた。先輩は少し考える素振りを見せながら、話し始める。
「君は確かに図書室にいたぞ。グリムが終わる頃だと言って、ここから実験室に向かって出て行った筈だ」
「ですよね…。でも、何故かわからないんですけど……」
図書室の扉を開けていない気がする、なんて言ったら。
ふと頭に過る考えが、じわりと私の記憶を、思考を、埋め尽くしていく。私は昨日何時まで図書室にいた？何時にここを出た？昨日読んでいた本はいつ本棚に戻した？何時に実験室に、グリムたちに会った？いつ、どこで、なにが、どうなった？？
あれ？私の記憶は正しいの、か？な。
「ほたる？…大丈夫か？」
「っ…ジャミル、先輩」
ジャミル先輩の手が私の頬に添えられる。頬を伝うように首元へと手が動く。喉仏を、頸動脈を、項を。落ち着かせるための行為なのか、あるいは、蛇のように這う動きなのか。それすらもわからないほど、理解できないほど、頭の中で情報が整理できていなかった。ただ、先輩の言葉だけが、精神安定剤のように、脳に響いていた。
「落ち着けほたる。昨日君は確かに、図書室から出たぞ」
「は…っ、ぁ」
「大丈夫だ。君は何も間違えていない。全て、正しい」
混濁とした記憶に戸惑う思考を晴らすかのように、ジャミル先輩の声が響く。首元から伝わるひんやりとした温度、先輩の温度の低い掌。その冷たさは、まるでショート寸前の私の思考を一気に冷却したかのように、私の思考の回転を落ち着かせた。先輩の黒い瞳と、私の瞳が交わった。くらり、酩酊したかのように意識が遠のく。まるで魔法でもかけられたかのように。
意識を手放す寸前。ジャミル先輩の瞳が、ほのかに赤く揺らめいたように見えた。
*
「滲出」の文章を一部修正致しました。
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楠@ぽぽいぽい(プロフ) - ノコさん» お初お目にかかります。お読みくださりありがとうございます。スカラビア寮推しの同士が中々見当たらず…嬉しい限りです。伏線は少しずつ張り回収していく予定でございます。ご期待ください。気分次第の更新となりますが、楽しみにしていただけると幸いです。 (2020年5月18日 22時) (
レス) id: 9deb7daf21 (このIDを非表示/違反報告)
ノコ(プロフ) - はじめまして！実は私もスカラビア寮推しでして…主さんの小説にもう伏線のようなものがあって最高です…更新楽しみにしてますね！！！ (2020年5月16日 18時) (レス) id: a7f52ab7e6 (このIDを非表示/違反報告)
楠@ぽぽいぽい(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます。私もヤンデレ大好きでございます。ほぼ自己満の小説ですが、続きが気になると言っていただきとても光栄です。お体への気遣いもありがとうございます。ユイ様も体調に気を付けてくださいませ。 (2020年5月15日 22時) (レス) id: 9deb7daf21 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - ヤンデレ好きなので続きが気になります！無理をせず頑張ってください！！ (2020年5月15日 10時) (レス) id: 00314e100f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楠 | 作成日時：2020年5月14日 20時
