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「見つかるといいね。」

交番に着いた後、別れる寸前に彼女が僕にそういった。


事情を説明して、書面での手続きを一通り終わらせたあと、今日泊まるホテルが決まるまで、交番の中で待たせてもらうことになった。

時刻は23:00を回っている。
目をつぶる。
ー君が羨ましいよ……

ーあの頃の方が、幸せなのかも…


ー本当の自分は誰なんだろうね。

彼女の声が脳内にこだまする。

彼女は本当の自分を知っているのだろうか。僕がこの街で迷っているように。彼女も本当は迷っているのではないのだろうか。
そうだとしたら、「見つかるといいね。」
あの言葉は、彼女が自分自身に投げかけた言葉だったのかもしれない。

考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えたいき、意識が遠のく。

ふと、気がついて目を開ける。
いつの間にか眠ってしまっていたのか。

目の前に広がる世界は、どこか見覚えのある懐かしの風景。

あれ、さっきまで僕は…

思い出そうとするが、霧がかかったように思い出せない。

立ち上がり、自宅を目指す。
帰り道、ひとつのポスターに目が止まる。

「あれ、彼女…どこかで…」

気のせいか。テレビで見かけただけかもしれない。きっとそうだ。それでも、どこか懐かしさを感じたのは本当に僕の気のせいだったのだろうか。

「私、あなたのこと知ってる」

どこからか聞こえた声も、空耳だと歩き出す。



「…僕のこと、知ってる?」

終わり ログインすれば
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作者名: | 作成日時:2022年5月22日 23時

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