けじめ(丑→→→←寅 病み失井) ページ9
【1】
「きみが最も一緒にいたい人は?」
と聞かれて香奈江が戸惑ったのは、自分には愛する人なんていない＿＿＿＿とかゲームのラスボスみたいな感情だった訳でもなく、
むろん、お前なんかに教えるかよ、みたいなツンデレ感情だった訳でもない。ここで香奈江が困惑しているのは、
その質問を仕掛けてきたのが自分の師匠＿＿＿＿否。
樫井栄児だったためである。
「はぁ?何言ってんだい」と悪態をついてはみるものの、その答えはひとつ。しかし「あんたに決まってるだろ」なんて言う訳にもいかないので、特に気にもかけず新たな酒瓶を空ける＿＿＿＿新たな酒瓶を開けて、すぐ空ける。
そう、今思えば、その気にしないのが良くなかったかもしれない。
「.....。」微笑んだあとに、いつもよりも目を見つめてきたと思えばすぐに視線をずらして、栄児は、呟いた。何と言っていたのかは香奈江には＿＿＿＿脳内どころか身体中アルコールに侵された彼女の耳には届かなかった。
そのあと、酒の影響かすぐに眠たくなり、「それじゃあ、あたいお先〜」と、ベッドへと潜り込んだ香奈江だったが、その安らかな睡眠はすぐに断ち切られることとなる。
何かを＿＿＿＿そう刀を、いや、そうではない。刀ではなくそれは＿＿＿＿サーベルを。
サーベルを研ぐような、ジャッ、ジャッ、という嫌な音と共に。
できることなら布団から起き上がりたくなかった。
香奈江がサーベルなんて持ち出すはずがないし、今まで寝ていた。もしも持っているとするならもちろん、
「『丑』の戦士＿＿＿＿『ただ殺す』失井」
のものである。
「な.....。おい!」がばりと飛び起きた香奈江は、すっかり酔いが覚め、ただ、驚愕の表情を浮かべていた。
「＿＿＿＿どうしたのかね、香奈江」「お前、何しに行くんだよ、こんな夜中に。急に名乗りあげるもんだからびっくりした」栄児は自らのその美しい黒髪を揺らしながら言った。
「ならば、自分自身との戦い、とでも言うかね。
私は戦士だから、こんなことにはならないと、ずっと思っていたのに」栄児が＿＿＿＿誇り高き『丑』の戦士が何を言っているか、香奈江にはよく分からなかった。ただ、邪魔してはいけないのだということ、それだけは彼女も察して、また眠りにつく。
「おやすみ」
という彼のその声は、恐ろしいくらい優しかった。
【続く】
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ぶるうべりぃ♪(プロフ) - もうとにかく丑寅が好きすぎです！寅ちゃんが乙女してるところが可愛すぎて辛いですよね！ (2020年8月30日 18時) (
レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
ファイアー@宝石の国沼(プロフ) - つゆもち。さん» 分かってもらえて嬉しいよつゆちゃん(( こっちにもコメントしてくれてありがとうね〜〜 (2019年5月18日 20時) (レス) id: 0900a9cb6c (このIDを非表示/違反報告)
つゆもち。(プロフ) - テンションがwwwwwでもめちゃくちゃ分かります...... (2019年5月18日 17時) (レス) id: 1767128fae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ファイアー@橙蛙不二周助の人 | 作成日時：2018年8月24日 13時
