with tears ページ15
『別に、もう泣かない。』
意外なことに
彼女はちょっと拗ねたように
ぷいっと向こうを向いた。
さっきまでの涙がまだ
彼女の頬を光らせていた。
「そっか、」
僕はポケットからハンカチを取り出して
「濡れてる、
擦ると跡ついちゃうよ」
そう言って彼女の手に握らせる。
ありがとう、と小さく言って
ハンカチを頬に当てた。
拭き終わったのか、
少し経つとハンカチを握った手を下におろした。
そしてポツリポツリと言葉を摘んだ。
『いずくは、どうして爆豪くんと一緒にいるの？』
「…へ？かっちゃん？」
思わぬその言葉に少し拍子抜けする。
「うーん、どちらかと言えば切島くんとかの方が
かっちゃんと一緒にいると思うけど…」
『でも幼なじみなんでしょ、』
「まぁね…、でもなんで、って聞かれちゃうと
難しいなぁ。」
少し頭を悩ませた。
「……その涙の原因は、かっちゃん？」
僕がそう言うと、大沢さんはキュっと
僕のハンカチを握った。
…あぁ、そうなのか。
かっちゃんは彼女になにを言ったんだろう。
また嫌なことを言ったのだろう。
でもそんなことを考えている僕をよそに
彼女は小さくこう言った。
『…違うもん。』
「え？」
『爆豪くんなんか関係ないもん。
…てか、私泣いてないし。』
「えぇええ！そこ否定する？！」
あまりに意外な言葉に声が大きくなってしまった。
僕の言葉に大沢さんは
手をキュッと握りながらバッと立ち上がった。
そして顔を少し赤くして慌てたように言った。
『あああもういいから！！
話聞いてくれてありがとう！教室戻ろう！
授業始まる！！』
そう言って彼女は歩き出した。
「あ、ちょっと待って！」
結局涙の原因は分からなかったが、
追いかける僕に彼女はケラケラ笑って見せた。
今日は珍しい表情がたくさん見れたなぁ。
なんてことを考えるのだ。
「…へぇ。」
階段を降りて2人の後ろ姿を眺めながら
相澤消太はそう呟くのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 182人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pikaito00(プロフ) - やっとここまで読み終えました(^ ^)とても面白いです！続編まってます(^ ^)♪ (2020年6月28日 13時) (
レス) id: 158c9172ac (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこ(プロフ) - 面白いっ！続きが気になる...更新楽しみにしてます！ (2020年6月7日 13時) (レス) id: fb813ea952 (このIDを非表示/違反報告)
pikaito00(プロフ) - とても面白い小説に出会えました…！！！すごく好きです…^_^ご無理なさらずに頑張ってください！！ (2020年5月31日 21時) (レス) id: 158c9172ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たったらぽー | 作成日時：2020年5月23日 0時
