終わり。【E】-3 ページ9
「⋯⋯うう」
「どした?」
布団の中でもぞ、とえおえおに背中を向ける。えおえおはキョトンとしていた。
「何?今更恥ずかしがってんの。何年付き合ってると思ってんのさ」
「だからだよぉ!」
そう、Aとえおえおは、初めてこの真っ昼間から交わった。
窓から入ってくる光で、彼の表情がもろに見えて。そして彼の表情が見えるのならば、当然自分の表情も相手に見えるわけで。
『⋯⋯A』
『っ、な、に、』
『⋯⋯いつもより、可愛い』
そう言ってふにゃりと笑った彼の表情が、頭にこびりついて離れない。
「あああもう!」
「っえ、どしたの急に」
「恥ずかしいんです!」
やけくそで叫びながら、布団を頭まで被った。じわじわと熱を持ち始める頬を隠すためだ。
⋯⋯まぁ、世界が終わる前にえおえおと愛を交わせたのは良いかな、とも思いつつ。
__するり
布団を掻き分けて、その手が進入してきた。後ろから布団を剥ぎ取る音がして、呼吸が少し楽になる。
「⋯⋯恥ずかしいってば」
「そう?世界が終わる前にAの新しい一面見れて、良かったけど」
腰の辺りから回された腕が、ゆっくり緩く動く。恥ずかしさはまだ残っていたが、彼に対する愛しさが蘇ってきた。
いつもの低い声よりも低い声が、頭の芯に溶けていく。
「⋯⋯そういや、明日の真夜中⋯⋯1時ごろだったっけな。ホントはマイクラ録る予定だったんだよね」
「そうなの?」
「そ。でも、世界が終わるんじゃ、もう録れないよね。まぁ、アイツらは知らないから仕方ないんだけど」
「⋯⋯私達だけ知ってるって言う優越感、凄いなぁ」
「ふふ、確かに」
えおえおがゴソゴソと何かをいじり始めた。乾いた小さな音がして、スマホをいじっているのだと理解する。
「ちょっと寝よう。動いて疲れたでしょ」
「そうだね。寝たいや」
「じゃあ、30分後にタイマーセットするね」
操作を完了させ、ベッドの上にポンと放る。
「⋯⋯おやすみ」
「うん、また30分後に」
寝返りをうち、えおえおの腕の中に潜り込んだ。自分を抱擁する彼の心臓の音が聞こえて、生きてるんだな、と今更ながらに嬉しくなる。
1つ1つ、タイマーの数字が小さくなっていく。
__残り 7時間__
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作者名:玉ねぎプリン | 作成日時:2018年8月5日 21時