あなたはいつも【K】※シリアス ページ40
side:You
あなたはいつもそうだった。
いつも、私の先を歩いていて。
いつも、私を置いてけぼりにした。
そのくせ、「愛してる」だとか「ずっとそばにいてほしい」だとか「離れないで」だとか、そんな事をよく言っていた。
今にも零れ落ちそうな雫を光らせて、苦しげに笑いながら。
端正な作りの顔が歪むのは、なかなかにくるものがあった。
自分が原因だと知っているから、尚の事堪えた。
いや、彼の事は好きだったし、今も大好きだ。なんなら愛してる。
けれど、その存在は私には大きすぎた。眩しすぎた。
私は、不釣り合いすぎた。
だから、何も言わずに彼のもとを去った。
「さよなら」も「ありがとう」も、「愛していました」すらも言わずに。
彼は彼の仲間と一緒に、明るくて美しい景色を見て生きていくべきだから。
私は一人きりで、暗くて汚い世界にいるの。
でも、さいごに、もう一度だけ。
美しい世界に囲まれているあなたを。
赤と青と黄色と緑の海を泳ぐ綺麗なあなたを、見るために。
キラキラと彼の周りが光る。弾けた汗がライトを反射している。
それは、彼が今まで築き上げてきたものの証。努力の賜物。
懐かしさと愛しさと罪悪感でぐちゃぐちゃになった感情のまま彼を見上げていると、破裂音と共に色とりどりの銀テープが舞った。
何かを探す様にキョロキョロと辺りを見渡していた彼も、幸せそうに空を仰いでいる。
記憶の中にある彼と重なって、喉の奥が締まった。
でも、未練を残したらいけない。私とあなたは、決別するべきなんだ。
何故かぼやける視界をそのままに、ステージ上の眩しいギタリストへ視線を送り続ける。
光に目を奪われていた彼は、またすぐに目線を忙しなく動かし始めた。
切なげな顔で見渡すものだから、決意がすぐに揺らぎかける。緩む口角を戒める意味で唇を噛んだと同時に、彼と目線が重なった。
__愛してる
__離れないで
言葉の重みが心にのしかかった気分だ。このまま恥も外聞もかなぐり捨てて抱きつきたくなる。
濡れた双眸のまま笑い合いたくなる。
……違う。
私は、違う世界の住人だ。
私なんかが一緒にいちゃいけない。
彼がハッと目を見開いたのを認め、私は目を閉じる。
もう大丈夫。あなたには、仲間がたくさんいる。愛されている。
私の事はずっと覚えていて下さい。そして、忘れて幸せになって下さい。
愛していました。
最期の瞬間まで。
私の一番大切な人、きっくん。
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作者名:玉ねぎプリン | 作成日時:2018年8月5日 21時