【MS.SP】短編集2 (ページ32)

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あなたとの好きを【K】-２ページ32

あれだけテーブルに乗っていた皿の料理も無くなり、小さなケーキも食べ終わって、空になった食器を流し台に置いた。
食後すぐに洗わないのは少し気になるが、今日くらいは良いだろうと正当化する。

「きっくん、この後どうす⋯⋯、？」
全ての食器を水に浸して居間に戻り、そこにいる筈のきっくんに呼びかけていると、いつの間にか背後に回っていた彼が抱きついてきた。
彼の優しい体温を感じて、腕に手を重ねる。その所作で、彼は着替える為に一旦居間を去った後、その流れで自分の背後に回った事を悟った。

「⋯⋯A、渡したい物があるんだ。そんな豪勢な物じゃないんだけどね」
いつもより低いトーンで、きっくんが囁く。その声に痺れを感じていると、きっくんはAの前に回ってきた。
その手には、小さな花束が鎮座している。ライトがその花びら達を照らしていて、とてもロマンティックだった。

「造花でごめんね。この黄色い花は俺で、白い花が雪、ピンクの花はAなんだ。A、花好きだよね」
「え、そうなの⋯⋯？わ、嬉しい⋯⋯！うん、花好きだよ！」
「それだけじゃないんだ。花言葉も、ちゃんと意味があるから」
はしゃぐAを諭す様に人差し指を自身の唇に当ててそう言うと、きっくんがぐっと体を寄せてきた。きっくんの男らしい胸板が触れ合って、思わず身構える。
「黄色のがパンジーで、『つつましい幸せ』。これがガーベラね。『究極の愛』『親しみやすい』『優しさ』。白いのは朝顔で、『固い絆』とか、『溢れる喜び』。これがペチュニアで、『あなたがそばにいると心が和む』だっけな。こっちがナデシコ。『長く長く続く愛情』。
⋯⋯あと、こっちのピンクのはスカビオサ。花言葉は、『感じやすい』」
一気に色々な言葉が入ってきて、理解が追いつかない。
＿＿えっと、何？幸せと、愛と、えっと⋯⋯？

「まぁ、要約するとね」
思考がフリーズしかけているAを見て、きっくんはケラケラと笑声を上げた。目を白黒させているAを見兼ねて、きっくんが花束をテーブルに置く。
触れ合っていた体をさらに引き寄せられ、彼の腕の中に飛び込む形になった。強く抱きしめられて、鼻腔がきっくんで満たされる。