【MS.SP】短編集2 (ページ17)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:23,697 hit

Like a cat 【Ａ】-２ページ17

とは言っても、あろまを責める訳にもいかない。風邪になったあろまが悪いのではないだから。
今は、彼が治る事を第一に考えなければならない。

大きな音がたたない様に、静かにシャワーを浴びる。必要最低限の水量で、自分の体をまとう泡を流した。
⋯⋯そう言えば、シャンプーの中身とボディソープの中身が逆なのは何故だろう。あろまは『まぁ、色々あったんだよ』と濁していたが。
Aは真相が気になったが、そうはぐらかされては食い下がろうにも食い下がれない。その事を、Aは熟知していた。
その時はひとまず『そっか。気をつけるね』と頷いておいた。
⋯⋯が、気になるものは気になる。教えてくれないだろうけどな、とも考えながら、流れ出る水を止めた。

「⋯⋯あろま、お休み」
もう一度寝室を覗いて、Aは居間のソファへと向かう。
『あろまはちゃんと寝室で休んで』
『⋯⋯え、Aの肩とか、痛くなるんじゃ⋯⋯。仕事に支障出るべ⋯⋯』
『私の事は大丈夫。まずはあろまの体調でしょ』
そんな会話を思い出して、Aの意識は水底へと落ちた。

朝8時頃。朝ご飯の用意をしていると、玄関のチャイムが鳴った。返事をして扉を開けると、そこにはえおえおがいた。いつも丸まっている背中に、今日は『申し訳なさ』が付いている気がした。
「えおえお君。どうしたの？」
「えっと、お見舞いと、この前のお詫びに、プリン買ってきた」
「あ、ありがと。⋯⋯お詫びって？」
「あろまに言えば分かると思う。こんな事位しか出来ないけど、看病、頑張って」
「あ、うん。ありがと⋯⋯」
じゃ、と手を振るえおえおを見送り、扉を閉じる。
⋯⋯お詫びって、なんだろ？なんか悪い事してたっけ？
Aは何度も首を傾げながら、そのプリンを冷蔵庫にしまった。

朝ご飯を咀嚼しながら考えるのは、やはりあろまの事。今日は何を過ごしていたんだろう、だとか、プリン1個だけ貰おうかな、だとか、早く治ると良いな、だとか。
食べるのに時間をかけ過ぎたせいか、食後に飲む為に淹れておいたお茶がぬるくなっていた。そのお茶をちびちびと飲み下す。
1人で食べるご飯はなんだか味気ない。
3つパックになったプリンのパッケージ。そのビニールを親指で裂く。スプーンで掬ったプリンを勢いよく口の中へ放りこんだ。