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「＿＿くん、お＿て＿＿＿」
誰かに肩をゆらされているのが分かった。
でも、体は動かない。
「おい国見起きろ」
金田一に強制的に起き上がらされ、目が覚める。
『………ん…なに』
「"なに"じゃないよ国見くん。もうみんな集まってるし、行こう？」
マネージャーに手首を引っ張られバスを下りる。
けれど生憎、反抗する気力は無い。引っ張ってもらって行く方が楽だ。
「おっ！国見ちゃん起きた！じゃあみんな集まったとこで行こうか」
及川さんがそう言うと、各自自分の荷物を持った部員たちは建物に入っていく。
自分の荷物は誰が持ってるのか、それともどこに置いてあるのか。
初めにマネージャーに目を向ける。
次に金田一。
その次に岩泉先輩に及川さん。
でも誰も持っていない。
じゃあまだバスか、と思っていたところ、肩を叩かれる。
「…これ、荷物」
振り返れとそこには俺の荷物を持つアイツの姿。
おずおずと怯むような目付きで俺を見つめるアイツの姿は"昔"となんら変わらないものだった。
『……ありがと。じゃ』
黒川から荷物を受け取り、前を歩いていた金田一の隣にアイツから逃げるように向かう。
ちらりと後ろを見ると、アイツは笑いながらマネージャーと話していた。
頬を赤らめ、穏やかに笑う姿は久しぶりに見た。
歩き、建物に向かう先輩たちの姿を見ながら今さっきまで見ていた夢を思い浮かべる。
『…馬鹿かよ』
嫌ってるアイツの姿が時より、愛しく感じてしまう。
アイツの考え方も生き方も、間違ってるとは思う。アイツのせいで誰かが傷つくし、アイツのせいで誰かが振り回される。
でも、そんな姿でさえ綺麗に見える。
自分に酔ってるのかもしれない。
思い込みかもしれない。
けど……
黒川の笑顔が好きだったのには変わりない。
思い出に浸りながらその気持ちを心の奥深くに閉じ込める。閉じ込め、二度と出てこないように押さえつける。
だって、"気持ち悪い"じゃないか。
.
続く
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作者名：腐りかけのパン粉 | 作成日時：2021年10月24日 17時
