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「昔から…って言うことは、高校入る前から？」
「…はい。家族ぐるみの付き合いがあって」
ひたすらに岩泉先輩たちの会話に耳を傾けた。他愛ない、ただの先輩と後輩の会話だったけれど、やはり驚いた。
アイツと中学は違う学校だったけれど、アイツの噂は常々聞いていた。
高嶺の花は男嫌い。
そんなフレーズが出来るほど、アイツは有名だった。
男嫌いということが逆に唆る、という物好きな男は沢山いるようで、何人もの男がアイツに告白したらしい。その都度打ち砕かれてはいたが、噂は永遠に止まない。
次第に男どもは告白をやめ、アイツをアイドル化した。
そう、手が出せないと諦めたのだ。
結果、晴れてアイツは男から近寄られなくなり、女子からの羨望だけを得るようになった。
でも、男嫌いは直ってないはずだ。
高校に入ってからも、そんな噂は聞いたことがない。噂が全部が全部真実とは限らないことは分かるが、アイツの男嫌いはそう簡単に直らない。
ひん曲がった性格は、そうそうたること直らないだろう。
『英くん。話って…なに？』
放課後、紅葉が枯れていく季節、告白するような甘ったるい雰囲気に包まれた男女が向かい合った。
「なぁ…」
あんたはなにがしたいんだ、そう言葉を続けた。
あの事件があってから、アイツの本性にやっとのことで俺は気付いた。
アイツの浅く、表面的なものしか見ていない、見ることの出来なかった俺は、幼いながらも注意深くアイツを観察した。
決して、気づかれないように。
けれど、見過ごさないように。
傍から見れば、女子を観察する男子など変態でしかないと思うけれど、俺にはそんな思考は無かった。
ただただ、アイツのことを知りたい。
そんな好奇心だった。
「…英くんさ。聞くけど……どうやって答えて欲しい？」
青色の瞳がこちらをじっと見つめる。
その姿はまるで拾った子犬のようで…けれど、獲物を狙う猛獣のようで。
その姿に戸惑いながらも口を開く。
『質問に質問で返さないで欲しいんだけど』
そう答えると、アイツは困ったように眉をひそめながらニコリと笑う。
鳥肌が立った。
綺麗には変わりないし、可愛い表情。
でもそれは、冷たかった。
アイツの目は、笑っていなかった。
「お姫様になりたいよ」
なんでも許してもらえるお姫様に＿＿
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作者名：腐りかけのパン粉 | 作成日時：2021年10月24日 17時
