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「いやぁ。まさか、
バスの中、隣に座る金田一が呟いた。
席はバスの中で後ろから二番目。アイツやマネージャーたちは最前列にいるらしく、及川さんたちと騒いでいる。いや、"マネージャーと及川さん"が騒いでいるのか。
『百瀬？』
そう聞くと金田一は苦笑いしながら言った。
「いや、うちのマネージャーだけど」
『百……あー確かにそういえばそうだった』
マネージャーって呼んでたから気づかなかった。というか、入部当時から覚えようとしなかったし。
『百瀬…ゆい？だっけ？』
「
あ、そうだっけ。
興味無いや。
『俺もう寝るから』
金田一のおう、という声を聞きながら、リュックサックからアイマスクと塩キャラメルを手に取る。
塩キャラメルの袋を破り、流れるように口に入れアイマスクを頭にかける。
後ろに人がいないことを確認しながら、座席を少し後ろに下げ、アイマスクを目にかける。
視界を遮断すると、バスの中で発せられる音が一気に耳に入ってくる。
いつもなら気にも留めない声すらも。
「黒川って百瀬と仲良かったんだな」
岩泉先輩の声がどこからが聞こえた。
前の方の席で呟いているだろうと声の大きさから察する。
自分の耳ってこんなに良かったっけ、と疑念を抱きながらも左側の窓によっかかり目の力を抜く。
「…そうですね、結羽とは昔から」
無機質で乾いた声。
アイツの声を聞いた途端、心臓がどくりと脈打った。
そのせいで反射的に体がはねる。
アイツが……
アイツが
それだけのことだけれど、ただただ驚くしか無かった。
だってアイツは、
男が大嫌いなのだから。
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作者名：腐りかけのパン粉 | 作成日時：2021年10月24日 17時
