001. ページ1
.
「来週の三連休、合宿するって話は前にしたと思うんだけど……詳細を今から伝えるね！」
部活の練習の後、及川さんが言った。
そして、合宿の詳細のプリントを部員たちに回しながら説明を始める。
そんな様子を横目見ながらプリントに目を通す。
前から予告されていた合宿。
綿密に組まれたスケジュールには吐き気がする。
だって進んで練習に参加するタイプじゃないし。
けれど、そんなことを部員に言ってしまえば、もっと面倒臭くなるだろう。だから口には出さない。
説明が終わったあと、及川さんが"マネージャー"に目配せしたことは見逃さなかった。ちらりと見て彼女から話を促すような、そんな目つき。
きっと、合宿関係で彼女から話があるのであろう。
何の話かと考えながらマネージャーが口を開くのを待つ。
「…えと、合宿中のマネージャーの仕事がそのぉ…私一人じゃあ大変…なのでぇ。友達にマネージャーの仕事を手伝ってもらいたいんですけとぉ……みんな、いいかなぁ？」
友達……
彼女にそんな人がいるのだろうか。
そんな疑問が頭によぎる。
こんなこと考えていたら普通に失礼だろうけど、部員の中でも何人かは思っているだろう。
別になにか問題を起こす訳では無いし、練習の邪魔にはならない。むしろマネージャーの仕事への意欲はあるし、そこらにいる女子よりはよくやってくれてると思う。
でも、マネージャーになった動機は及川さんがいたってことだったし、部員へのスキンシップも多い。
なので必然的に彼女は女子から目の敵にされている。
このマネージャーは全校の女子から嫌われてる、と言っても過言ではないだろう。
冒頭に戻るが、そんな彼女に"友達"はいるのか。
いないだろう。
確信に近い感情を導き出す。
そして、頭で思考を巡らせているとミーティングが終わっていることに気づいた。
部員たちや監督もみな承諾していたし、その"友達"とやらは合宿に参加することとなった。
みんなが帰っていく中、マネージャーに目をやる。少し緊張していたのか、手は小刻みに震え、そそくさと帰る準備をしていた。
おかしい。
そう思ったけれど、なにかをするわけではない。
マネージャーのことを心配する義理は無いし、マネージャーのせいで練習が中断でもしたらサボれるからだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：腐りかけのパン粉 | 作成日時：2021年10月24日 17時
