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田中の用意した日向専用ゲロ袋の活躍も無事に無く、到着した仙台市体育館。
バスから降りて荷物を確認する最中、鷹石は入口付近で立ち止まる彼らからやや険悪な雰囲気を感じたものの、顔を上げた時には既に彼らは足を進めていたため、首を傾げるだけに留まる。
前を歩く武田と清水に続いて鷹石は、烏養と共にまとめた戦術ノートを読み返しながら2人の後ろを歩いた。
「…チョット」
『!あぁ悪い。ありがと月島』
突如として引かれた腕に顔を上げると、鷹石のすぐ側を通る2人の選手。
危うく前から歩いて来た選手にぶつかる所だったらしい鷹石の腕から手を離し、月島は「別に」となんとも彼らしい淡白な返事で歩みを再開させる。
傍らでは、清水にノートとバインダーでそれぞれ頭を叩かれた西谷と田中が、何故か嬉しそうに笑みを浮かべているのだが、その経緯を知らない鷹石は『(何かすげぇイキイキしてんな…)』と不思議に思いつつもノートを閉じて月島の後に続く。ぶつかるのは御免である。
険しい面持ちで歩く影山の隣に並んだ。
「オイ、アレってアレだろ…天才セッターって噂の…」
『?』
好奇の視線が自身の隣に注がれていることを理解すると、鷹石は不思議そうに辺りへ視線を配る。
何故彼らがこんなにも注目されているのか皆目見当もつかないからだ。
「――北川第一の"コート上の王様"…!?」
『(あぁ、そういう…)てオイ、睨むな』
「ッテ!」
その異名を口にした選手へ勢い良く顔を向けて、射抜かんばかりに睨みつける影山の後頭部を鷹石は持っていたノートで引っ叩く。
油断も隙もあったもんじゃない。
「んだよ、何もしてねぇだろ」
『怖いんだよ。お前目付き悪すぎ。あといちいち"王様"に反応してんな』
「……」
「プッ」
「ッてめぇ何笑って『影山』……」
瞬時に失笑する月島に気付いた影山が、苛立ちに顔を歪ませた刹那。
彼女から発せられた些か低い声に彼はビクッと肩を跳ねさせる。
不服そうに眉を寄せながらもようやく静かに歩みを再開させた影山に、鷹石は小さく息を吐きだした。
そしてふと後ろへ目をやると、そこには周りを忙しなく見渡しながら歩く日向の姿。
相変わらず彼は落ち着きがない。
『おい翔陽、キョロキョロすんな』
「!オス!」
駆け寄った日向に『ちゃんと前見て歩け』と自分を棚に上げて注意する鷹石に気づく日向ではない。
素直に「おう!」と彼女の隣に並んだ。
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紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2月20日 23時) (レス) @page27 id: 147f4e35b6 (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - ひゃー!続編おめでとうございます!!ソーカ先生の作品大好きです!これからも頑張ってください! (2020年6月1日 19時) (レス) id: b2bfb3614c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソーカ | 作成日時:2020年6月1日 14時