伝えれば、生きる希望。feat.緑谷出久 ページ1
中学時代からの友人である彼女は、生まれつき身体が弱かった。
怪我をすれば治りは遅く、風邪をひけば必ず高い熱が暫くの間続いた。
彼女との出会いは登校初日。
地元の公立中学校には当然、受験しなかった元クラスメイト達が進学するし、他の地区の小学校の卒業生も集う。
隣の席である彼女に話しかけられたのが、在り来りであるが、僕達の始まりだった。
彼女は後者だった。
故に僕が無個性であることは、入学して暫くは知らなかったようだ。
だが、ココには当然、僕の出身校の卒業生が多く在籍しているわけで。
同級生の中で、無個性なのはただ1人。
僕だけだった。
自己紹介で自身の個性を言うのはスタンダードとされている現代で、僕のその事に関しては当然のように広まった。
彼女の耳にもとうに入っているだろうと思っていたのだが、彼女の態度は依然として何一つ変化はなかった。
不思議に思ったし、もしかしたら奇跡的にまだ知らないままなのかも、とも思った。
いつ終わるかもしれない恐怖で、時折内心で震えながらも、居心地の良いこの関係を自ら壊すような発言など僕にできるわけなかった。
普通の友人という関係は、5歳以降、できたことなどなかったのだから。
それでも、コレについてはいずれ伝えなければと思っていたのだが、如何せんそんな勇気は劣等感に塗れた当時の僕に備わっているはずもなく、ズルズルと先送りにしていた矢先。
ソレはクラスメイトによって伝えられた。
しかも、僕の目の前で。
鈍器で頭と心臓を殴られた気分だった。
からかい目的だったのだろう、そのクラスメイトは昔からよく無個性をネタに馬鹿にしてくる奴だった。
―――終わった。
そう思ったのも束の間
『私の片親である父と育ての親である祖母は無個性ですが何かモンクでも？』
堂々とクラスメイト、引いてはその場にいる全員に言い放ったかのような彼女の言葉に、誰も、何も言い返すことはなかった。
たった一言で牽制を成し遂げた彼女の背中は、華奢であるはずなのにとても大きく、何よりも逞しいものに見えた。
その時から、彼女は僕のヒーローとなったのだ。
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絵音(プロフ) - すごい好きです。主人公と 出久くんの本音を言い合うところとかほんのに好きです。素敵な物語を読ませてくれてありがとうございます…ッ！！！ (2019年5月22日 23時) (
レス) id: 740c8210f3 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 凄くあったかい良いお話でした！生きて欲しいと説得？してるところとかもう涙が止まらず泣きながら読みました！素敵なお話を有り難うございます！ (2019年2月19日 23時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソーカ | 作成日時：2019年2月14日 14時
