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1人首を傾げる水揮を他所に盛り上がる女子達。
その傍らで八百万が既にブラウニーを上品に頂いているのが、なんともシュールであった。
女子達のマシンガントークに内心着いていけない水揮の名前を、八百万が呼ぶ。
自席に紅茶も並んだ完璧なティータイムの光景に、「食品も創れるのか…」と胸中で感心した。
「とっても美味しいですわ。ありがとうございます」
「…ん」
微笑む八百万に、返せたのはそれだけだった。
喜んでくれて、食べてくれて、嬉しい。
良かった。良かった…。
あぁ、なんだか、懐かしい。
母に褒められた時の感覚にそっくりだ。
胸が暖かい感じ。
「ねぇねぇ水揮！」
「なんだ三奈」
「ソレ！もしかしてブラウニー？」
芦戸が瞳を輝かせて指すのは、水揮の腕に下げられた紙袋。
頷いて肯定する。
「誰かにあげるの？」
「いや、特に宛はない」
「食べたい！」
芦戸の瞳が輝きを増した。
便乗する形で葉隠も腕を上げ、それに続いて次々と上がる声に、水揮の背中に冷や汗が流れる。
何故自分は味見用…になったものを持ってきてしまったのか。
漸く予定が合ったランチラッシュの元へ味見をお願いしようと丸ごと持って来たのがいけなかった。
彼の元へ向かう最中、急用が出来てしまったと謝罪の着信により、発案者である弟にメッセージを送る。
『工房』と受け取った文字に、目的地を変更した。
続いた『ぼっち飯なぅ』のメッセージに既読無視をするのはお約束だったりなかったり。
着いた先で、ブラウニーを食した弟に感想を求めるも、返って来たのは「女子力皆無かよ」。
味ではなく、八百万用に包んだ黒い紙袋を手に言われ、水揮は「じょしりょく？」。
首を傾げる水揮へ彼は何やらテキパキと作業をしながら、言葉を次々と投げかける。
「男にやるんじゃねんだからもっと飾れよ」
「黒が悪いとは言わねぇけどよ、せめて柄物にするか何か色入れろ」
「地味すぎだろ舐めプか」
「ＪＫ舐めてっとマジ面倒なんだからいろいろ気遣え」
「て、お前もＪＫか」
なめぷ？じぇーけー？と疑問符を飛ばす水揮だが、決して口を挟まない。
彼の行動が、自分のためにしてくれているものであると解っているから。
手早く、個性を使って再度ブラウニーを切り分け、２色の小袋に一つひとつ詰める。
最後に、彼曰く地味な袋に、白いリボンの小洒落たシールを丁寧に貼り付けて。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
