12 ページ48
その言葉に彼らがそれぞれの反応を見せると、解構の笑みは一層深まる。
実際、彼女の個性を見ていないわけではない。
ノーモーションで敵の身体を凍らせたり、オールマイト並みのスピードを見せたり。
そういえば、自身の血も操っているようだった。
自分達を守るように彼女が作った赤い壁は、おそらく水揮の血液によるものだろう。
オールマイトの傷も塞いでいた。
が、それだけの力を目の当たりにしても彼らの中では依然として、彼女の個性は謎のままで。
というより、次々と出てくる水揮の個性に、何個持ってんだとさらに混乱した。
やっぱりな、と彼らが知らないことを理解した解構がそのまま言葉を紡ぐ。
「ヒント、見に行こうぜ」
そう言うや否や、端へと移動する解構に続いて彼らも足を進める。
階段脇を見下ろした解構が「うっは大量〜」と機嫌よく笑う。
その視線の先の光景に、彼らは驚愕の息を飲んだ。
階段脇から徐々に上へあがる巨大な水球。
中には解構が言うように、大量の『敵』が浮いている。
その中でも多くの『敵』の首を生やした岩塊は一際異彩を放っていた。
ゆっくりと彼らの立つ地面に降り立った水球の傍らには、プレゼント・マイクに背負られた水揮と大勢の警察官、数名の雄英ヒーロー。
何名かの警官が手錠を構えていることから、これから捕らえるのだろう。
「なぁ…解構…」切島が唖然とした様子のまま、そろりと水球へ指を向ける。
「どしたー」
「アレ…空無が…？」
「おん。あの黒いボールは違うけど」
彼らの視界で水球と岩塊が崩れる。
破壊された扉の瓦礫に、岩塊の欠片が重なり、それらを水が色濃く染めた。
解放された敵に次々と手錠が嵌められる。
「空無の個性…マジで何なんだ…」
「…チッ」
「……」
スピード、氷、血と来て、こんどは水と岩。
ますますわけがわからないと、顔を歪める彼らとは対照的に、解構はそんな彼らを見つめて楽の笑みを浮かべていた。
素早く外へ連れ出された敵を見送ったプレゼント・マイクの背中で、力尽きたように身を預ける空無水揮という存在が、彼らの中で深く刻まれた瞬間だった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
お久しぶりです。
駆け足ではありましたが、USJ篇は之にて無事完結でございます。
「放置かオイ」と思ったら、忘れた頃にやってくる…そんな不定期更新クソ野郎ではありますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
感想などあれば評価諸共よろしくお願いします。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
