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「これか？」早足で戻ってきた轟に礼を言って、蓋を開ける。
冷気がぶわりと溢れ出したそこから、小ぶりな試験管とスポイトを取り出す。
なんだと覗く彼らに対し、「水揮の血」とスポイトで血液を吸い取りながら簡素に答えた解構に、彼らの動きは固まった。
「肉抉られた挙句、臓器も切って出血多量だからな。ぶっちゃけはよしねーと死ぬんだわコイツ」
淡々と紡ぐ解構の言葉に彼らの表情は引き攣る。
全く緊張感の感じられない解構へ、切島は思わず声を上げた。
「お前っ何でそんな…っ姉貴じゃねーのかよ！」
「おーおー騒ぐねぇ。
俺も最初は取り乱しちまったから、切島のこと言えねーけど…ヒーロー目指すんなら、腹に穴空いたぐれーで取り乱してんじゃねーよ」
『！』
「コイツにはそれも薬だが、他の奴にはお前のそれは害にしかならねー。
ヒーローが怪我人以上に不安気にすんな。カッコ悪ぃーぞ」
スポイトの血液を容器に入れながら、解構は切島を一瞥する。
唇を噛み締めた切島が「悪ぃ…」と呟いた。
スポイトをケースに仕舞って蓋を閉じる。
「謝んなよ。最初は誰でもそんなもんさ。
俺も偉そうな事言っちまったし、おアイコだ」
歯を見せて笑う解構に、切島の表情も和らぐ。
容器を手に取って、中身を回すように揺らしながら「おーい生きてっかー？」と水揮の狐面をノック。
「もう少しで終わっから気張れー。
こんだけイケメンに囲まれてんだ、おっ死んだら承知しねーからなぁ水揮」
「…ぃ…め、ん…て…な、に…」
水揮の僅かな問いの声に、解構の顔が含み笑いで歪む。
「調子戻って来たじゃねーか。その調子だぜクソ水揮」
言うや否や容器を口に持って行き、解構は煽る様に中身を口内へ含んだ。
驚愕に顔を染める彼らを尻目に、脇腹の患部に両手を包み込むように添えて、数回口内の液体を動かす。
ビクリと身体を震わせた水揮へ、解構は身を屈ませた。
患部に添えた両手の隙間に自身の口元を隠す。
ややあって、そこから淡い藍色の光が優しく漏れ出した。
「すげぇ…」
ボソリと呟いた切島に、解構は一瞥を寄越すも、彼は光に目を向けたままそれに気付かない。
轟と爆豪も同様に、無言で光を見つめていた。
無事塞がった感覚に、解構は口を離す。
両手をしっかりとそこに押さえ付けて、光を収めた。
「は〜い終了〜」
パッと両手を離して、口元を拭う。
礼を言って拘束を解くように促す解構に、切島と爆豪も手を離した。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
