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「加減を知らんのかっ」
「！オールマイト！！空無さん！！」
ヒューッヒューッと息を乱す水揮の口元から面の破片が落ちる。
咳き込む彼女の口から血が流れ落ちた。
(チッ、肉が抉れた…それに、)
脇腹を押さえて確認する。
拳が迫ったあの瞬間、水揮は氷を生成するのを止め、急所を避けるため咄嗟に身をよじりながら脳無の拳を弾いた。
幸い内蔵は無傷。
しかし水揮の脇腹を掠めた脳無の拳は、彼女の肉を削いでいった。
何より衝撃によって、飛ばし続けていた『敵』の処理が途切れてしまったのだ。
「仲間を助けるためさ、仕方ないだろ」
緑谷を例に挙げながら、死柄木は語る。
他が為に振るう暴力は美談になるのだと。
ヒーローが振るう暴力、『敵』が振るう暴力。
同じ暴力でも、それをする者によって善し悪しが決まるこの世の中に、自分は怒っているのだと。
「なにが『平和の象徴』、所詮抑圧のための暴力装置だお前は！」
両手を広げて演者のように語る死柄木を、ボヤけた視界で水揮は見つめる。
「暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世に知らしめるのさ！」
―――違う。
水揮は単純にそう思った。
彼の言葉からは、何も感じない。
アイツにも感じた何かが、死柄木の言葉からは微塵も感じなかった。
オールマイトも水揮と同じようで、彼に対して嘘つきだと吐き捨てた。
「ォー…マィト…もう、立てます」
「っしかし」
「いいからっ、立たないと…守れない…」
水揮の言葉にギリッと歯を噛み締める。
オールマイトの腕から抜けて、水揮は身体をフラつかせながらも、自身の両足に力を入れる。
ナイフを取り出し、口元の血を拭う水揮に、死柄木が自身の首を軽く掻いた。
「…もう止めてよ水揮。俺はお前を傷つけたくないんだ」
「なら、大人しく…投降…し、て」
「それは出来ない。水揮と一緒にいられないじゃないか」
一拍置いて、死柄木が忌々しげにオールマイトを睨み付ける。
「お前らがいるから…！
救えなかった上、力があると分かれば自由を奪って閉じ込める。
どっちが『敵』か分かったもんじゃないなヒーロー」
「っ」
「……」
静かに語る死柄木に、オールマイトは拳を握りしめる。
苦しげに顔を歪めるオールマイトを、水揮は横目に見つめた。
「俺が解放してやるんだ。
お前らの所じゃ、水揮は一生不幸のまま。自由にはなれない」
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
