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「…まぁ好きに呼んでくれて構わないよ。切島鋭児郎も」
向けられた顔に、切島は二つ返事で答え、笑みを浮かべる。
「んじゃぁ空無って呼ぶわ！俺の事も普通に切島で良いぜ！」
「俺も！」
「解った、切島、上鳴」
「おう！」
「で？空無はなに悩んでたん？」
「あぁ…そうだな…」
上鳴の問いかけに暫し思考を巡らせる。
いきなり頼み事をするのは、この年代の間ではどうなのだろうか。
しかし彼らは内容を聞いてきたわけで。
しかも、気にかけて、態々自分に声までかけてくれたのだ。
それを蔑ろにするのも、人として如何なものか。
何より、自分は今、結構、真剣に、困っているのだ。
頼みの綱だった弟も、モノだけかっさらって消え去った。
手にジワリと汗を感じながら、水揮は意を決して口火を切った。
「上鳴、切島。少し頼みがある」
「なんだ？」
「遠慮なく言えよ」
人好きのする笑顔で対応する二人に、水揮の心臓が激しく波打つ。
女子達と話す時よりはマシなそれでも、やはり慣れない行為に違いはない。
ギュッっと手に握った持ち紐に力を込め、ソレを胸元まで持ち上げた。
心做しか湿ってきた紐から手を離し、紙袋の左右の端を両手に握る。
顔は見られない。
俯いて「頼む」ボソリと呟いた。
「食べてくれ…」
「「え」」
弱々しい声音に、思わず漏れたソレ。
先程までは無表情を声にしたように喋っていたにも関わらず、突如として現れた感情。
カサリ、紙袋を二人へ遠慮がちに差し出すその姿が、さながら、所謂ベタな青春の１ページのようで。
実際そんなことは無いわけだが。
台詞も、よくある可愛げのあるモノでもなければ、目の前の彼女は決してか弱くはないし、なんなら余裕で自分達より強い。
わかってしまった身長は、上鳴より高く、切島と並ぶくらいで。
それなのに
「…悪い 、他人の手作りは無理だったか…」
「「っ」」
スッと彼女の胸元まで戻った紙袋を握る指先に力が入ったことが、その声音が、水揮の感情をありありと示していて。
どこか小さく見える水揮に、彼らの心臓が女子達宜しくキュウッと締め付けた。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
