5 ページ28
「っ」
言葉通り、死柄木の背後で、相澤が顔をこちらに向けていた。
赤く色付く瞳に、彼のその背に迫る脳無に、水揮は氷を死柄木へ向けて砕く。
飛び退く死柄木の横を通り過ぎ、拳を上げた脳無と、それに振り向く相澤へ手を伸ばす。
相澤を抱き込んで、自分達の身体を弾いて、振り下ろされた攻撃を躱した。
コンクリートを抉る拳に、水揮の狐面がビキッと音を立てる。
背中を打ち付けて、口から空気が吐きでた。
腕を解いて、鼓膜に触れた水音に、瞬時に顔を上げる。
再び蛙吹へ手をかざす死柄木に飛び上がった緑谷が拳を上げていた。
視界の端で脳無が動く。
痛みに息を乱す相澤から手を離し、グッと足に力を込めた。
地を蹴って飛び上がる。
やはり速度が落ちた。
方向を微調整した先で、脳無が緑谷の拳を腹で受け止める。
すぐさま蛙吹と死柄木の間に滑り込み、通り過ぎざまに片手で彼女と峰田を水中へ弾く。
そのまま勢いを殺さず、脳無に腕を取られた緑谷へ冷気を纏う手を伸ばして。
(間に合え間に合え間に合えっ！！出久！！)
「触るな…」緑谷を胸に抱いて、脳無の手を凍らせる。
そのまま砕けた腕に目もくれず、脳無は振り上げた手を水揮達に下ろす。
避け切れない。
衝撃を覚悟し、水揮は緑谷をキツく抱き締め、その目を閉ざした。
――刹那
響いたのは轟音。
地面に転がった水揮と緑谷は互いに出入口へと、顔を向けた。
その存在に、誰もが安堵する。
そこに立つヒーローに、平和の象徴に、誰もが。
「オールマイトォおおおお！！」
安堵の表情で泣き叫ぶ峰田の声を耳に、水揮はその身を崩す。
「空無さん！！」水揮の肩を支える緑谷の手を、そっと離して彼女は立ち上がった。
酷く息を乱す水揮を不安気に見上げる。
それを横目に、水揮が怪我の有無を問うた。
「手の指以外は…」
「そ、ぅか…っ…ハアッ…」
痛む脳に脂汗が滲む。
今にも割れそうな面に手を添えて、その場しのぎに凍らせた。
冷気が顔を撫でる。
それと同時に、何かが体を支えて。
水揮は考えるまでもなく、その逞しい首へと腕を廻した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
