『A』② (ページ26) - 小説/夢小説

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見えた水難ゾーンに、水揮は眉を寄せた。

水面には崩壊した船と、一塊で騒ぐ敵。
よく見ると彼らには黒い球体が付いている。
たしかアレは峰田の個性なのでは、と取り敢えず水球で彼らを覆い、その仲間の元へ飛ばした。

水面を軽く凍らせて、そこに降り立つ。
息を一つ吐いて、僅かに鈍く痛み出した頭に小さく舌を打った。
粗方外のゾーンは見回った。
此処に飛ばされた峰田と誰かを出入口に向かわせて……

そこでふと視界に入った影に、水揮の喉がヒュッとなる。

広場。

そこでは相澤が敵を引き付けているはずで。
しかし、小さく見えた光景は、大きな黒い何かが、人には見えない物体が、相澤へとその腕を振り下ろしていた。

心臓が跳ね上がる。

腿裏から武器を出して瞬時に刀身を伸ばす。
氷を蹴って、黒へと飛び上がった。
背後で砕けた氷をそのままに、最大速度で向かう。
途中すれ違った生徒に、水揮は目もくれなかった。

―――何を…

横を通り過ぎた水揮に、緑谷は目を見張る。
刃物を脳無へ突き刺した彼女に蛙吹と峰田は息を飲んだ。

―――「何をしてんだ、クソ野郎…！」

地を這うように低く、唸るような声。

彼女の瞳が、振り向いた相澤を捉えた。
血に塗れた相澤に水揮は歯噛みする。

力任せに剥き出した脳から刃物を抜き取って、瞬時に相澤を掴む手を腕ごと切り落とす。
叫ぶ脳無を尻目に地面へ降り立って、両足を切り離した。

金属音が響き、刀身が折れる。

それを鷲掴んで、目の前の左胸へと突き刺し、そのまま手をかざす。
離れて佇む異様な出で立ちの男へ向かって、脳無の身体を弾き飛ばした。

「消太さんっ」

「水揮…」

躱されたのを尻目に相澤へ駆け寄る。
頭部の出血が酷い。
髪を解き、その布を短刀を使って破いて患部に押し当てるも、血は全く止まる気配を見せない。
クソ…。小さく吐き捨てて、布をキツく巻き付ける。
濃く色づくそこに手をかざして、流れを止めて固める。

酷い痛みが脳内を駆け巡った。

崩れた肘にも布を巻き付ける。
キュッと固結びをした所で、相澤がか細く彼女の名前を呼んだ。

「に、げろ…アイツの、目的は…お前だ…っ」

「……」

無言で立ち上がる水揮に、相澤は焦燥に駆られる。
足を前へ出す水揮に相澤の手が伸びるも、虚しく宙を切るだけだった。