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その間も次々と現れる者を横目に、水揮は了承して13号へと歩む。
状況を把握していない生徒達へ、水揮は腿裏から薄い刃物を出す。
「動くな」
よく見ようと身を乗り出そうとした生徒達に、水揮の無感情な声がかかった。
振った刃物が、金属音を響かせて彼らの前でその身を伸ばす。
水揮の言葉に続いて、相澤はゴーグルを装着し、視線を前から逸らすことなく。
相澤の声が彼らの鼓膜を震わせた。
「あれは、『敵』だ」
驚愕、緊張、そして恐怖。
自身の目の前に現れたそれに。
彼らの反応を尻目に、水揮の意識は相澤へと向けられる。
多勢に対して、相澤は単身で挑む事を選んだ。
勇敢。そう取れるだろうが、体術のみが物理攻撃である彼では些か部が悪いだろう。
相手の実力が解らない。
並大抵の者では相澤には敵わないだろうが…。
「13号、空無、避難開始！」
「先頭頼みます」
「わかりました。全員！入口へ！」
飛び出した相澤へ頷き、武器を握り直す。
駆けて行く生徒達に気付かず広場で応戦する相澤を、感心したように見下ろす緑谷へ、飯田の声がかかる。
続けざまに「死にたいのか、緑谷出久」と水揮の声もかかって。
最後尾に着いた緑谷の後に続き、水揮も警戒しながら足を進める。
(っ！？しまった！)
気配を感じて振り返った時には、既に黒い霧が頭上を掠めていて。
目の前に二人の『敵』が降り立った。
霧は前方の彼らの前へと立ちはだかっている。
足を止めた彼らに、水揮は「まずい」と眉を寄せる。
あの霧はおそらく、先日の十四と同じもの。
つまりワープ系個性。
生徒を人質にでもされては、守るものも守れない。
なにより先頭にいるのは、救助を主な活動としている13号。
戦闘には幾分か能力に欠ける。
そこまで考えて、最後の一人の顎を蹴り上げた。
武器を雑に納めて、気絶した二人の体を水球で覆う。
手を振ってソレを階段の脇へと下ろした。
そこで響いた爆発音に、水揮は地を蹴り、その身体は弾かれたように前へと飛ぶ。
13号の前に降り立って、目の前の背中に舌を打った。
爆煙が晴れる前に飛び出した二人の腰ベルトへ手を掛ける。
力任せに引っ張って、切島と爆豪が自身の左右後方へ転んで行くのを尻目に、水揮は叫ぶ。
「13号！ブラックホールを！！」
「それでは君が！！」
「いいから早くッ！！！」
晴れた煙の向こう、姿ある霧の者を瞳に捉えて。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
