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「困っている人を助けるのがヒーローじゃないのか？私は実際君達に救われた」
その言葉に、彼らは自身が彼女にした言動を振り返る。
たしかに水揮は困っていた。というか、悩んでいたらしい。
だが、それに気付いたのは自分達ではなく、サポート科の彼なわけで。
彼女からの頼み事を請け負ったが、彼らからすればそれは、彼女とのコミュニケーションの一貫のようなもので。
逆に言えば、自分達は味見とはいえ彼女にご馳走になったとも言えるのでは…やはり、「助けた」と言うには些か、いやかなり物足りない。
「んな味見くらいで大袈裟だって！」
「そうそう。むしろ俺らからしたら美味いモン食えてラッキーって感じだぜ？」
「…そうか…。
でも…君達からしたら大袈裟な事でも、私にとっては、とても、そうじゃないんだよ。
君達の言葉があったから、私は安心したんだ。だから百に渡せた。
百達に美味しいって言ってもらえたのも、響香に…連絡先を貰えた事も…。
凄く嬉しかった…全部、切島と上鳴のおかげだ。だから二人とも…」
「ありがとうな」声音に、彼らの心臓が大きく波打つ。
彼女の感情が全て込められたその一言が、彼らの言葉を詰まらせて。
腹底からグワリと迫り上がる熱。
それをどうにか漏らすまいと二人は自身の唇に歯を立てる。
「水揮ー、アンタのアカウント、ヤオモモ達に回して良い？」
「ん、構わない」
ワイワイと耳郎の周りに集まる女子達に視線を向けていた水揮がそれを戻すと、そこには胸を抑える彼らの姿。
痛むのか？と問いかける、いつもの声音に戻った水揮へ曖昧に返し、そろりと視線を外す。
「おい、本当に大丈夫なのか」
「ああ、問題ねぇよ…」
「強いて言うなら、名誉の負傷だから…気にするな…」
(結局怪我をしてる…のか？)
(なんとなく思ってたけど…やっぱ空無って…)
(良い声、なんだよな…)
密かに思う彼らなど、当の本人が知る由もなく。
そんな彼らよりも、A組女子達のアイコンが次々と表示される現象に、水揮は端末画面に釘付けだ。
「増えた。全員貰えた。上鳴切島、見て」
『っ！』
無事全員の登録が完了するや否や、そう言葉を放ったどこか無邪気に喜ぶ子供のような水揮に、彼らからついに呻き声が僅かに漏れたのだった。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
