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ふと視線を上げると、彼女達を眺めるように佇む耳郎。
八百万が紅茶のリクエストを求め、彼女達が注文している事に苦笑を零していた。
輪からそろりと抜け出し、耳郎の前に出る。
そういえば、教室に入ってから耳郎の声を聞いていない。
彼女は騒ぐタイプではないが、それでも一言も発しないのは、水揮にはやや違和感があった。
心做しか、表情もどこか違和感がある。
「具合でも悪いの？」
「え」
「？」
「あー…」
首を傾げる水揮に、視線を逸らして頬を人差し指で軽く掻く。
ついぞ顔を俯かせた耳郎に、水揮は彼女の名前呼んだ。
謝ろう。
そう思ってはいるが。
なんだか、彼女は気にしていなさそうで。
初回の戦闘訓練があったあの日から、耳郎はずっと悶々と日々を過ごしていた。
着替えて教室へ戻っても、彼女の姿は無く。
次の日見たのはものの1分程度。
というか、彼女の行動の所為でその事がぶっ飛んだ。
そして今日。
彼女は変わらない様子で現れて。
しかも彼女から声をかけてくれた。
発言からは気にしたようには見受けられないが、内心ではどうか分からないのだ。
なにより、スカートの件は地雷だった。
その事に関して、自分のケジメの為、彼女とのこれからの付き合いの為に、やはり謝るべきなのだ。
ややあって、耳郎は水揮を見上げた。
「水揮」
「ん？」
「スカートの事、ごめん。アンタのこと考えずに聞いちゃって…」
「……スカート？」
「…ん？アンタ怒ってたんじゃないの？」
「……戦闘訓練の帰りか？」
「うん」
「……」
「……」
水揮はたしかに覚えていた。
にも関わらず、彼女の反応に耳郎は脳内にまさかの予感を察知。
一方、水揮は頬を引き攣らせる耳郎に、内心頭を抱えていた。
やらかしてしまった。
弟と母にあれほど言動には気をつけろと、自分のそれは誤解を生みやすいと、言われてきたというのに。
だからこそ、慣れないながらも、自分の気持ちがよく伝わるように、言葉も選んで、意識していたというのに。
生んでしまった、誤解。
あの時のどの行動が、言葉が、彼女に謝罪を促すことになったのか、皆目見当もつかないが、それでも伝えなければ。
自分は怒っていないと、謝る必要は皆無であると。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
