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「ほれ。ちっとはマシになったぞ」
「ん。ありがとう」
「コッチは今日母さんとユキさんに持ってくわ」
「え」
「んだコラ、見舞い来ねぇ奴が。顔出せねーなら品出せや」
「ん。解った」
「どーせ二人とも喜ぶよ」
教室に忘れ物をしたらしい彼に続いて、水揮も工房を出る。
廊下を歩きながら、他愛もない話をして。
「そいやぁ睡さんのコスチュームどうだった？」
「足さばきが楽」
「上は？」
「変わらない」
「ほー」
「あ、も1個フツーのやつくれ」
「…ミルクチョコのか？」
「そー」
「ん」
「あとは友達に味見でもしてもらえよ…あ、ごめん」
「何がだぼっち飯」
「あぃた」
「…あげられる物か？」
「どんな物でも甘味なら正義だ。チラつかせとけば大抵の奴はハイエナのように寄って来る」
「そんなので寄って来るのはハイエナであるお前だけだ」
「うっわ急に辛辣な」
去り際に残した弟の言葉が脳裏を過ぎった。
目下の彼女達へ視線を向け、持ち紐を握る。
「女は度胸よーみっちゃん」とひらりと手を振っていた背中に「度胸……自信…」と胸中で唱える。
続いて切島と上鳴、先程の八百万の笑みが浮かんで。
自信なんか無い。
でも、彼らはコレを美味しいと言ってくれたのだ。
それ位の、彼ら分の自信なら、持って良いはずだ。
「コレ…味見用で…。
それでも良いなら…食べてくれ…」
「ホント！？」
「やったぁ！水揮のブラウニー！」
「コレもしかして味２種類？」
「白い袋がミルクチョコレートでもう一つがビターチョコレートでしたわ」
「女子力！」
水揮の席で盛り上がる彼女達に安堵して、小さく息を吐く。
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年5月22日 23時
