Episode 03『父と、私の決意』 ページ9
焦凍が小学校に入学した。
私は相変わらず自宅療養が続いている。
そろそろ私も焦凍と登下校をしてみたい今日このごろ。
幼稚園でも終ぞ叶わなかった囁かな少女の頼みを、専属医はなかなか首を縦に振らない。
私の心はこんなにも元気だというのに。
なかなかどうして、身体は思うようにいかないものである。
「柊焔お姉ちゃん！ただいま！」
「おかえり焦凍」
中学生用の教材から顔を上げ、可愛い弟に返答する。
筆記具を置いていつものように問いかけた。
「手洗った？」
「洗った！嗽もしたよ！」
「そっかぁ。…宿題は？」
「もう！お姉ちゃん！」
しつこいとばかりに吠える焦凍に失笑して「はいはい」と両手を広げた。
飛びついて来た焦凍を受け止めて、頭を撫でてやる。
猫のように擦り寄る弟のなんと可愛いことか。
「柊焔ー、焦凍来て…たわね…やっぱり」
「お姉ちゃん、おかえりなさい」
「おかえり冬美お姉ちゃん」
「ただいまー。アンタ達はいつ見ても引っ付いてるわね…」
「最近、体温が安定しなくて…」
「で、焦凍に暖めてもらっていると」
「一家に一台焦凍くん。どうでしょうお姉様」
「そんなこと言うの柊焔だけよ」
最近焦凍の個性の上達が目覚しい。
と言ってもそれは、何かを凍らせることであったり、炎を出すことに関してではなく、体温調節である。
自身の体温を高めたり、逆に下げたりと、体温調節が下手くそな私のために頑張ってくれたのだ。
個性では私の方が焦凍の上位互換のくせに、なんだこの体たらくは。
そしてなんだこの身体は。最近どうも体温の変動が大きい。
ちなみに今日は、肌寒い日である。
マジで焦凍様さまだ。
「あ、そうそう焦凍」
「？なに？」
「…お父さんが呼んでる。道場に来いだって」
「！」
冬美ちゃんの言葉についに来たかと、ピクリと反応した焦凍の頭を撫でる。
ギュッと私に抱きつく焦凍の腕が強まった。
そういえば、最近は家にも安定して帰って来ている。
それに比例して母も…。
「…大丈夫だよ焦凍。後でお迎えに行ってあげるから。お父さんとお話してきな？」
「……うん」
「大丈夫大丈夫」
体を離して立ち上がる焦凍を見上げて、できるだけ安心するよう笑いかける。
「大丈夫だよー、焦凍」
まるで自分に言い聞かせるように。
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ソーカ(プロフ) - サキさん» 初コメありがとうございます！(感涙)ソーカにはもったいないお言葉でございます<(_ _)>楽しんで頂けて幸いです(*´ω｀*)妄想が膨らみ次第の更新なので不定期になってしまいますが、今後ともよろしくお願い致します！ (2018年5月21日 21時) (
レス) id: ba8d561192 (このIDを非表示/違反報告)
サキ - はじめまして!題名からもう神ってるなと思い読んでみたら神な作品でした。これからも楽しく読んでいこうと思います!応援してますよ〜! (2018年5月21日 15時) (レス) id: 69ece300b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソーカ | 作成日時：2018年3月12日 10時
