『A』 (ページ12)

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「…クラスの女の子達が…話しかけてくれました」

「うん」

「その……みんな…オールさんや相さんみたいな、とても優しい人達で……でも…」

「？」

まさに、子を持つ親の気持ち。
そんな心境で聞いていたオールマイトだが、水揮の表情が僅かな曇りを見せたことで、その気持ちは不安なものに一変する。

「…解構から聞いていた、女の子の"みんな一緒"という常識が、違っていたんです…」

「……。あ、そうなんだ…」

ホッと息を吐いたオールマイトの前で、眉を寄せて真剣に悩んでいる様子の水揮に、毎度ながら苦笑する。

「(この子は本当に…変な所で純粋というか、なんというか…)」

温かい茶を口に含みながら思う。
時折垣間見る、水揮のその無垢な子供のような言動は、彼女の過去を知る者からしてみれば仕方が無い事であり、当然とも言える事だった。

彼女には今の所、歳相応のそれがあまりにも少な過ぎる。

最も多いのは、十分な経験を積んだ大人のような言動と思考、そして驚くは彼女の鋼のような理性であった。
契約の下で、自分の感情を一切として見せないその言動は、大人のそれを軽く凌駕する。

しかしそれ以外、プライベートな彼女の言動は、表情は些か乏しいものの、とても素直なものなのだが。

「あ、そういえば、渡したい物ってなんです？」

「OH！そうだった！危うく忘れる所だったよ！」

「私もです」

苦笑する水揮を横目に、湯呑みを置いて立ち上がる。
足元からアタッシュケースを取り出して、オールマイトは「コレなんだが」と水揮へ差し出した。

「…コスチューム？」

「YES！」

「が、なんでオールさんの手に？」

「今朝ミッドナイトくんに、君に渡すよう頼まれてね。午後のヒーロー基礎学で是非感想を聞かせて欲しいそうだ」

そこでやっと無言で受け取った水揮は、そっと膝にアタッシュケースを乗せる。
俯いて、暫く無言でそれを見つめた後、出たのは幾分か低く、覇気のない声だった。