幼馴染も水泳少女

Episode31 ページ32

真琴「笹部コーチ Aについて聞きたい事があるんですが…」





笹部「A？」





真琴「A 中学1年の冬に急に競泳を辞めたんです

何か聞いてませんか？」





笹部「お前 Aに聞いてねぇのか？」





真琴「はい…」





笹部「昔 遙達が先に帰った事があっただろ？ Aを置いて」





真琴「はい Aに先に帰ってって言われて…」





笹部「アイツ その日は閉館間際までいたんだ」





真琴「え！？」





笹部「Aに『早く帰らなくていいのか？親が心配するぞ？』って言ったら


アイツ 言ったんだよ

『そんな心配してくれる優しい親 私には居ませんから…』って」





真琴「！」





笹部「アイツの親 かなりの完璧主義者でな

何でも1番じゃないと許さない親だったんだ


あの頃のAは目を塞ぎたくなるくらい必死だった

親に褒めてほしい、認めてほしい その一心で勉強も水泳も他の運動も何でも1位を取り続けた」





真琴「じゃあAは褒めてもらえたんですか？」





笹部「いや 褒めてもらえなかったんだ


『1位は取れて当たり前だろ』

『それぐらいの事で報告してくるな』って言われたそうだ」





真琴「そんな…」





笹部「それからもアイツは1位を取り続けた

だが、何に関しても無関心になっていったんだ

アイツは親に絶望したんだ


そして諦めたんだ

親に褒めてもらう事を…

認めてもらう事を…」





真琴「A そんな事一言も…


(だから段ボールにしまってたんだ…

トロフィーもメダルも賞状も…)」





笹部「アイツは弱い部分を見せたがらないからな

心配かけたくなかったんだろう」





真琴「A…」





笹部「真琴 お前達はAを見てやれ

アイツの側にいてやれ


お前達までAを見捨てるなよ？」





真琴「はい！もちろんです！」

Episode32→←Episode30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す