To you

21日目の "ダイアナ" ページ16

スングァンの布教は上手かった。



〔♪You know I got it, I'm your girl 〜
(私にはわかるよ、あなたの親友だもの)〕



つい口ずさみたくなるこの曲。
スピーカーのボリューム設定を間違えて大きめの音量で流してしまい、ハッとして下げる。

ちびすけも宇宙工場にいるから。



WZ「悪い、うるさかったな」



毛布にくるまるチビを膝に乗せ、むにむにと顔をマッサージ。
結構上達したはず。



WZ「スングァニにおすすめされてさ、ソルって歌手。昨日からちょっと聴いてた。曲は一通り聴いたんだけど……このデビュー曲が一番好みだわ」



いち作詞家として、彼女の書く歌には舌を巻いた。
「自分のリズムが分からなくなってどん底に落ちた時、私があなたのドラマーになる」なんて、俺なら思いつかない。



"ソル" は意外にも謎多き人物らしい。

公表している名前は芸名の "ソル" のみで、彼女の本名を知る者は家族以外いないという。

ちなみに "ソル" はローマ神話の太陽神ソールから、ファンネームの "ダイアナ" はローマ神話の月の女神ディアナからきている。
命名はソルのおばあさん。


首元に薄ら傷跡があるのだ、とスングァンは言っていた。

幼い頃にやんちゃすぎるあまり窓ガラスに突っ込んで怪我をしたことがあるらしく、その傷を縫った痕だという。
本人は隠す素振りを見せず、『私が超元気な証拠！』と笑い飛ばしているとか。
なんてポジティブなのだろう。


あとは、美しい青い目が特徴的だった。



WZ「お前の目……ちょっとだけ、ソルに似てる気がする。生で見たことないからわかんねえけどさ、綺麗な青い目らしいよ」



写真で見てあんなに綺麗だったんだ。
まるでこのチビの目みたいな、サファイア色。
きっと生で見たら吸い込まれそうな青に違いない。



そして "ソル" は、ラブソングを歌わない。
彼女の曲はどれも友情ソングやファイトソングばかりだ。

それも彼女の良さなのだろうが、どうしても考えてしまう。


俺好みの歌詞をぽんぽんと出してくる "ソル" がラブソングを書いたら、どんな歌詞を生み出すのだろう。




WZ「やばいな、結構ハマってきてるんだけど？明後日くらいにはダイアナになってそう、俺」




まあ、ちびすけに言ってもわかんねえか。

……だけどこの時、俺を見つめてくる澄んだ青い瞳がやけに印象に残ったのは、これからの暗示だったのかもしれない。

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