俺達のサジャ Ⅲ (ページ32)

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『えっと……色々あって、こっちでお世話になる事になりました。部屋を狭くしちゃって申し訳ないんですけど、これからよろしくお願いします』

「「「「「えええええっ！！？」」」」」

大きな旅行バッグを持ったまま、律儀に頭を下げるAと、そんな彼女を見て驚いたように声を上げるメンバー達。
そんな光景が繰り広げられているのは、俺を含むSEVENTEENのメンバーが共同生活を送る宿舎だ。

それは、俺がAが受けていたいじめに気づいてから、1週間後のこと。
Aは俺達の住む宿舎で一緒に暮らすことになった。
その理由は、「デビューに向けて、メンバーとさらに深く信頼関係を築くため」と社長からA伝てに知らされた (それもたった今)。

だが、その真相を知るのは俺とAだけだ。

要は、悪質ないじめを受けていたことが発覚した彼女は、俺達の宿舎に避難することになったのである。

JN「わあ、それなら一日中Aと一緒にいられるの！？嬉しい！」
SG「僕も嬉しいです！ヌナがいたらもっと楽しくなりますね！」
MG「ヌナ、荷物持つよ！重いでしょ！」
HS「けどさ、部屋どうする？どこか空いてるっけ？」
JN「じゃあ俺と一緒に寝る？俺のベッドまだスペースあるよ！」

「「「それはあかん」」」

Aを囲んでわいわいと騒ぎ始めるメンバー達。
嫌そうな顔をする人は一人もいなくて、みんな受け入れる気満々のようだ。

最終的にその場はスンチョリがまとめて、今は物置として使っている小さな部屋を掃除してAの部屋にする事が決まった。

「ヌナは休んでて！」「今お茶出すね！」「俺掃除してくる！」「僕が後で部屋案内します！」と大張り切りのメンバーに、Aは吹き出している。

バタバタと一気に慌ただしくなった宿舎。
俺もリビングの片付けをしようかと動き始めた時、くいっと服の袖を引かれた。

『あの、ジスシ』
JS「……A」

少し緊張したような顔で俺を見上げるA。
何か話があるのだろうと、場所を玄関の外に移した。
ドアを閉めていてもみんな声が聞こえてくる程に宿舎の中は騒がしくなっているのでここで大丈夫だろう。

『この間はありがとうございました』

丁寧に頭を下げるAを見て、俺は慌てて頭を上げさせる。
こんなことをしてもらう為にこの子を助けた訳では無い。
俺は当たり前のことをしただけだ。