俺達のサジャ XIII

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『Every night in my dreams
(毎晩、夢の中で)

I see you, I feel you
(あなたを見て、あなたを想ってる)

That is how I know you go on
(まだあなたはこうして生き続けているのね)』




9年ぶりに、おばあちゃんに届けるこの歌。

涙が溢れて上手く歌えない。
喉から出る声は震えていて、途切れ途切れだ。


それでもおばあちゃんは、ゆっくりと目を閉じた。

口元に、微かな笑みを浮かべながら…。




『Near, far, wherever you are
(そばにいても、遠くにいても、あなたがどこにいようとも)

I believe that the heart does go on
(あなたへの想いは変わらない)』




握り締めた手から、おばあちゃんの脈が伝わってくる。


ああ、どうしよう。
おばあちゃんの脈が、弱くなってきている。

だめ、だめだよ、おばあちゃん。




『Once more you open the door
(再び、あなたは扉を開き)
And you're here in my heart…and…
(あなたは私の心の中にいるの)』




まだ行かないで。


私を置いて行かないで。







『My heart will go on and on…
(私の心と共に、ずっと生き続けるの)』



「……あり、がとう……A……」







ふっ、と。

私が握っていたおばあちゃんの手から、力が抜けた。

もう、私の涙を拭ってくれる手は、動かなくなっていて。




おばあちゃん、待ってよ。





『……まだ……だよ……』





待って、おばあちゃん。






『まだ……全部歌い終わってないよ、おばあちゃん……！！』






……私の歌は。

いつも魂を込めてみんなに届けていた、私の歌は。




一番届けたかった最愛の人に、最後まで届かなかった。













あの日からもう、7日が経つ。

知人への連絡からお通夜、葬儀、火葬と毎日朝から晩まで慌ただしい日々を送っていた。


それらがようやく落ち着いて、ひとりぼっちになった実家に立ち尽くす。

外に出て空を見上げれば、星が散らばっている。




『おばあちゃん、空から見える街は綺麗ですか』




ここから見上げる空は、すごく綺麗だよ。


今日の夜空に散らばる星は、他の星との距離が凄く近い。

あれなら、他の星にも行けるかな。
おばあちゃんでも、お父さんとお母さんに会いに行けたかな。





時折聞こえてくる、車が道路を走る音。

風の音。


田舎の冬の夜は、静かだ。






だけど……



音って、こんなに小さかったっけ。

2021年1月13日→←星

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