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……だけど、ミンギュは逃げなかった。
MG「ヌナの手、離してください」
怖気付く様子もなく強い口調で、きっぱりと言い切る。
私に怯えるいつものミンギュとは別人みたいで、私やストーカー男よりもずっと体格のいい彼には鬼気迫るような気迫があった。
私ですら、一瞬気圧されてしまうほどに。
その瞬間、
─── ド ン ッ
HY「あっ……!!」
MG「ヌナ!!」
私を突き飛ばし、男はものすごい勢いでバタバタとトイレから出て行った。
だけど男の方には目もくれず、ミンギュはよろけた私の体をパッと支えてくれる。
MG「ヌナ、大丈夫!?」
HY「……っ、ごめん、」
ドッと冷や汗が吹き出た。
今になって出てきた震えで足と腰に力が入らなくなったけれど、そんな私の体をミンギュがぎゅっと抱きとめてくれる。
びっくりするくらい逞しくて、筋肉質な腕だった。
人に涙を見せるなんて柄じゃないのに、勝手に涙が溢れてくる。
がっしりと私を包み込んでくれる腕に、ずっと張っていた緊張の糸が途切れた。
HY「……ごめん。巻き込んで、ごめんっ……」
MG「なんで謝るの。それより怪我は無い?腕は平気?」
HY「うんっ……」
MG「そっか、よかった。でも痛かったでしょ」
その逞しい体からは想像もつかないくらい、そっと優しく腕を撫でられる。
まるで、痛みを消そうとしてくれているように。
……なんで。
HY「……なんで、助けてくれたの……?」
顔を合わせる度にAを巡って喧嘩ばかり。
私は今までずっと、あんたを目の敵にしてたのに。
なんでそんなに、優しく笑うの…?
MG「……ヌナだって今さ、危ない目に遭ってたのに俺を逃がそうとしてくれたじゃん。助けてって言う前に、俺に逃げろって言ってくれたじゃん」
MG「そういう人だってわかってるから。だったら尚更ヌナを置いて逃げるわけない、助けないわけない。当たり前でしょ」
─── もう大丈夫だよ。
……久しぶりだった。
誰かの言葉に、こんなに安心感を覚えるのは。
MG「ヌナ、帰ろう。俺、家まで送ってくから」
声の代わりにぼろぼろと涙が溢れる今、彼の言葉に必死に頷くことしかできなかった。
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来栖(プロフ) - miyukicheeseさん» miyukicheeseさん、ありがとうございます!とても励みになります😭 更新頻度にムラがあると思いますが頑張りますので、最後まで見守っていただけたら嬉しいです☺️ (2023年3月8日 22時) (レス) id: 3b73c7ec64 (このIDを非表示/違反報告)
miyukicheese(プロフ) - いつも楽しんで読ませていただいてます!続きが、続きが!!とても気になります!お体に気をつけてお過ごしください🍀*゜更新楽しみにしてます! (2023年3月8日 11時) (レス) @page20 id: f1f2a97f56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:来栖 | 作成日時:2023年2月9日 18時