No.38 どうして (HY side) ページ13
(HY side)
元々飲み会は嫌いじゃない。
お酒は好きだし、サークルのみんなと話すのはもっと好き。
飲み会の雰囲気も結構好きだ。
……だけど今日だけは、本当は行きたくなかった。
─── つけられている。
気づいたのはちょうど1週間くらい前のこと。
学校の帰り、バイトの帰り、出かけた先。
私の数m後ろをいつも同じ男が歩いている。
顔はフードで見えない。
だけどいつも同じコートを着ている。
私に何か用があるなら直接言いに来なさいよ。
そう心の中で何度も唱えた。
正体を隠して女の子を付け回すような卑劣な男に負けたくなかったから。
……だけどその男のせいで私の活動範囲が狭められているのも事実。
お昼のA達との外食も断ってしまうし、バイトも休みがちになり、休日もほとんど外に出なくなってしまった。
いつどこで見られているかわからないから。
あの男を視界に入れるのが嫌で嫌で仕方なかった。
悔しい。
あんな男に、私の自由な時間が奪われるなんて。
警察にはもう相談している。
だからあとは待つしかないんだ。
……だけど今日の飲み会だけは、どうしても断れなかった。
「ハユンちゃんお願い!私、ハユンちゃん以外に話せる人いなくて…」
HY「あー……そっか、いいよ!」
同じ映画研究サークルでよく話す子に頼まれて、まさかストーカー被害に遭ってるから行きたくないなんて言えるはずもなく、参加することになってしまった。
あまり気乗りはしなかったけどそこそこ人数の多いサークルだし、私と家が近くて帰り道が同じ子だっている。
だから今日くらいなら、きっと大丈夫。
最近塞ぎ込みがちで気が滅入りそうだったし、気分転換も兼ねて行こう。
……そう油断した隙を突かれた。
HY「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
久しぶりに飲んだのと飲み会の雰囲気のおかげですぐに酔いが回り、酔い覚ましがてら一人で席を立った。
賑わっている居酒屋。
トイレは個室の並ぶ通路のさらに奥の方で、廊下にはほとんど人通りはない。
だけど少し火照る顔を扇ぎながら女子トイレに入ろうとした瞬間、
HY「っ、!!?」
突然ガシッと腕を掴まれたかと思うと、ものすごい力で引っ張られた。
咄嗟に踏ん張れるはずもなく、呆気なく私はバランスを崩す。
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来栖(プロフ) - miyukicheeseさん» miyukicheeseさん、ありがとうございます!とても励みになります😭 更新頻度にムラがあると思いますが頑張りますので、最後まで見守っていただけたら嬉しいです☺️ (2023年3月8日 22時) (レス) id: 3b73c7ec64 (このIDを非表示/違反報告)
miyukicheese(プロフ) - いつも楽しんで読ませていただいてます!続きが、続きが!!とても気になります!お体に気をつけてお過ごしください🍀*゜更新楽しみにしてます! (2023年3月8日 11時) (レス) @page20 id: f1f2a97f56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:来栖 | 作成日時:2023年2月9日 18時