episode_three ページ3
tn｢す、ご…｣
彼は目の前の学園に目を奪われていた。
高い丘の上にある壮大な城。
大小様々な塔が連なり、真ん中の一番大きな塔を六つの塔が囲んでいる。
目を奪われる程、圧倒された。
それはトントンだけでは無かった。
周りの者皆、立ち止まり壮大な城を見上げていた。
止まらない鳥肌。
喉がゴクリと唸る。
tn｢早く行かんと……｣
トランクを引きずりながらトントンは城へと足を進めた。
その道中も不思議で見た事のない物だらけだった。
喋る植物に、動き出す甲冑。
本はひとりでに空を飛び、ありとあらゆる所に魔法で創り出された綺麗な蝶が出迎えた。
どれも彼には珍しい物で辺りをキョロキョロしながら歩く。やっと城内に入ると、そこには上級生と思われる数名が新入生を呼び止めていた。
｢新入生はここで待って下さい。大広間に入るのは全員が集まってからです。｣
ザワザワと喋り声が上がる中、上級生が大声を出しながら指示を出していた。
トントンは一先ずトランクを床に置き、その上に座った。
tn｢多すぎるやろ新入生…まあそれもそうか。｣
辺りを見渡しながらそう呟く。
すると、城の柱の隅の方の人集りに目が行く。
どうやら女子達が集まってお喋りをしているらしい。
意外と近かったようで、話し声が聞こえてくる。
｢ねぇ聞いた？フューラー家一族のご子息が入学するそうよ。｣
｢フューラー家ってこの学園を設立した……｣
｢そう。フューラー様が機嫌を損ねたら退学させられるって噂よ……｣
コソコソと話している内容が丸聞こえだった。
｢退学させられるなんて恐ろしいわ……関わらないでおきましょう。｣
｢＿＿＿＿＿ねぇ。｣
tn｢う、ぉ！！？｣
突然、肩を叩かれ後ろから声をかけられた。
｢あはは、ごめんごめん。驚かせてしまったね。なんせ暇で暇で……話し相手になってくれないかな、と思ってね。｣
少し大人びた口調でそう言う少女。
濁った銀髪を後ろで結びで藍色の瞳を細め、トントンに笑いかけた。
濁った銀髪＿＿＿＿＿＿？
tn｢あ！！？夢で＿＿＿＿＿＿｣
｢夢…？夢がどうしたんだい？｣
tn｢いや、何でもない………｣
｢そう？ならいいんだけど｣
不思議そうな顔をされ、慌てて取り繕う。
焦った心臓がバクバクと音を立てる。
tn｢は、話し相手になって欲しいんやっけ？俺で良かったらなるで。｣
｢本当かい？ありがとう。｣
目の前の少女はほがらかに笑った。
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作者名：緑のコウモリさん。 | 作成日時：2023年12月27日 10時
