記録係3【アンナチュラル 】

父親 ページ23

神「久部くんのお父さんです。」

やっぱり。
六郎くんの顔が曇る。

「愚息がお世話になっております」

そう言って軽く頭を下げた後、
六郎くんを見る目は
私が良く知る嫌いな目だった。

お茶を出した後、すぐにラボから出て行く。
ああ、嫌だ。聞きたくない見たくない。
あの人、六郎くんを息子だなんて思ってない。
六郎くんもきっとあの人を嫌いなんだろうな。

走って逃げるとドンと誰かにぶつかる

『あ、すみま…中堂さん。』

中「A、どうした。」

なんか安心して、
突然涙が溢れてきて
ぐしゃぐしゃになった。

中「お…おい！ここで泣くな！」

『だってね…だって…うう…！』

廊下で泣いてしまった私を見て
慌てる中堂さん。
たしかにこれでは中堂さんが泣かせたみたいだ。
でも、涙は止まらない。

中「とりあえず、こっちへ来い！」

引っ張られて空き部屋へ。
忙しい時にごめんなさい。
＿＿_
落ち着くまで中堂さんは隣にいて
黙って背中をさすってくれた。

『ごめん。もう大丈夫。』

中「何があった。
Aを泣かせたのはどこのどいつだ。」

今にもその犯人を見つけて
ぶん殴りに行きそうな中堂さんを見て
『いや、違くて…思い出しただけ。』

中「は？」

『六郎くんのお父さんの目、
私の親の目とそっくりだったの。
自分の子供を見る目じゃなかった。』

中「そうか…」

『私の親もおっかしいよね！
中堂さんは、お姉ちゃんの死因調べてさ！
今でも犯人探してるっていうのに、
中堂さんを犯人扱い！
そんなやつと一緒にいるなら
うちの子じゃないって！
…何も知らないくせに…知ろうともしないくせに』

また、引っ込んだはずの涙が溢れてくる。
だめ。泣くな。
一番泣きたいのは私じゃなくて…

中「A、ありがとな。」

切なそうに笑って
くしゃりと頭を優しく撫でてくれる。
ぎゅっと抱きしめてくれる。
こんなに優しい人なのに。

『中堂さんも…泣けばいい…のに』

中「Aが代わりに泣くから
それで良い。思う存分泣け。」

『だったら…思う存分泣く。
中堂さんの代わりに…泣く。』

中「ただし、それは俺の前だけだ。約束しろ」

『何それ…』と笑うと中堂さんが
私のおでこに優しくキスをする。

『じゃあ、私も約束の印に。』

と、私も背伸びをして中堂さんの
頬にキスをする。

中「なっ…！」

『約束だ…よ』

私は泣き疲れたのか、そこから
意識が無くなった。

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