あなたにピントを合わせたい (ページ28)

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私は眉毛の真ん中らへんから縦に長さ10センチ程の

ナイフで切られた傷がある

私は小さい頃に母を病気で亡くし

そこから父と2人で暮らしてきた

2人での生活が始まって半年ほど経った頃

父が急に暴れるようになった

父の力の向く先は私しかいなかった

叩かれ、殴られ、蹴られる毎日

私の身体はもう悲鳴をあげていた

耐えられなくなった私は

一度だけ父に抵抗したことがある

抵抗したことで逆上してしまった父は

台所にあった包丁を私に向けた

そのまま手に握った包丁を私の方に振りかざした

そうしてつけられたのが顔面の左側の傷

正直もう死ぬんだと思ったから

命だけでも救われたのはよかったと思ってる

私の叫び声を聞きつけた近所の人が

警察を呼んでくれて父は逮捕された

そのまま私は施設に預けられた

施設に持って行ったのは生前母が大切にしていたカメラ

私はいつも母の側で写真を撮るのを見ていた

傷を見るたびにあの出来事を思い出してしまうし

いちばん厄介だったのは対人恐怖症になってしまったこと

あの日から私は人間が怖くなった

だから、施設でも誰とも話さずただひたすらに

カメラで風景や草木を撮っていた

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