Starch ページ27
5月になった。オランダに行って再現VTRを撮らなくてはいけない。
でも、行きたくない。
A「はぁー。」
荷物を詰めながらため息が漏れる。
水田「明日、オランダ行くんやろ。どうしたん?」
A「行きたくない・・・。」
水田「何で?」
A「思い出したくないから。だって・・・セナちゃんが叩かれるんだよ?見てられない・・・。」
水田「えっ?叩かれるって?」
A「もういい。わかってくれないならいいもん。私、行かない。結婚式の前撮り済んだからいいでしょ!」
私はスーツケースをそのまんままにして寝室に行こうとした。
水田「待ってや。ちゃんと話してくれへんかな?」
A「そうやってふつーに少年時代を過ごしてきたしんたんに私の気持ちなんかわからないでしょ?」
私は力一杯叫んだ。
水田「話してくれへんとわからんけど、何があったん?」
彼は私の腕を掴んでリビングに戻るように言った。
水田「俺に言ってもわからんかもしれへんけど、ちゃんと聞きたいねん。」
私は頷き、泣きながら過去の少女時代を話した。
パパから雑誌の角で頭を叩かれたこと。
食事制限させられて周りと比べられたこと。
ブランド物を買い与えられて身につけるように強制させられたことやファッション雑誌を読むように強制させられたこと、泣きながら全てのことを話した。この話は今まで一度も彼に話したことはなかった。
まさか自分の過去を振り返り、話す時がくるなんてね。
A「今、ニュースで子供の虐待のことやってるでしょ。まるで自分のことのようで・・・命を絶たなかっただけマシなんて私だけなんで助かったのかなって?そう思っちゃう・・・。」
水田「せやな、ほんまに辛かったな。」
A「ママが言ってくれたの。Aのこと叩くんなら離婚するって。子供達連れて日本に行くって。それからパパは私のこと叩かなくなったけど怖かった。やっとパパとの関係が戻ったのは私が日本に来た高校生の時。全てを謝ってくれたから許してあげた。でも、自分の過ちに気付けたパパは立派だったと思う。けど、これをセナちゃんがやるんだよ?たとえ演技だったとしても・・・可哀想すぎて。」
水田「セナちゃんは演技だってわかって臨んでくれるんやから、これを機にみんなに知ってもらおう!虐待って怖いねんって。オランダ行けそう?」
A「うん。私行ける!」
彼は私の話を真剣に聞いて抱きしめてくれた。
この時私は決心した。明日、オランダ行こうって。
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作者名:アレグレット・マホーンズ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org./u.php/hp/0206/
作成日時:2019年4月11日 12時