推し恋〜波瀾万丈恋物語2 (ページ30)

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愛してるって言って5 ページ30

私が目を瞑ったらAがそれに応えてくれるかのように。

重ね合う唇とふわふわした気持ちが、混ざり合って気がおかしくなりそうだ。

そして見つめ合ってもう一回、唇を重ねてみるとまた違った情景が浮かんでくる。

週刊誌とか人の目とかこの時はどうでも良かった。ちょっとでも前に進めたらいいなって思ったから。

「今ね、すっごいドキドキなの。」
終わった後、私は視線を逸らさずに真っ直ぐな目をして言ってみた。
「俺もめっちゃ冷や汗かいたわー緊張したぁー。」
Aがそう言って笑ったのを見て私も釣られて笑ってしまった。
「まだ、出店あるから見てかない？」
「いいね。」
私達はマスクをつけてまた手を繋ぎてくてく歩きながら出店を見て回った。

今年の夏は私にとってステップアップしたそんな日々だった。

愛が芽生えたことにより、愛情が生まれて彼を愛したことにより愛着が湧いた。

愛って素敵ね。どんなに辛いことが起きたって彼がいるから頑張れる。そんな気がした。

出店を回ってフルーツ飴を買って食べたりして射的や輪投げなんかもやった。

金魚すくいもあったけど、うちでは飼えないので断念。

楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
今まで味わったことのない青春が今まさに押し寄せている。

帰りは一緒に電車に乗った。吊り革に捕まりながら楽しかったねなんて話す余裕もできたりして・・・。

電車が止まってドアが開くと彼が"またね"と言って降りようとしたのを私は彼の浴衣の袖を掴んでみた。
「どうした？」
「ごめん。なんでもない。」
「またいつだって会えるじゃん？そんじゃLINEでな。」
「うん。またね。」
咄嗟に彼の浴衣を掴んだけど少し会話してさっと離した。

それと同時に彼は駅のホームに降りて行ってドアが閉まった。私が去るまでずっと手を振ってくれる彼に向かって私も手を振り返した。

バイバイ、またね。

こうして私達の花火大会は過ぎて行った。