第7話 ページ9
ゼンどのに促され椅子に座ると、ゼンどのはゆっくりと話しはじめた。
｢俺も、昔はこの立場が嫌でした。王子である、というだけで俺に友人なんて居ませんでしたから。毎日毎日、城の中に閉じ込められて、大事にはされても、決して対等には見てもらえなかった。居心地は、最悪……でしたね｣
ゼンどのは苦笑したが、どこか照れ笑いにも見えるその笑顔は、ゼンどのの顔立ちを一層子供らしく、明るい表情にしている様にも思えた。
｢だから、俺は城をこっそり抜け出したりしたんです｣
｢えっ……！？怖くは、なかったのですか。一人で、外の世界に触れるのは｣
｢それよりも、外の世界を見ておきたい、という思いの方が強かったです。国は城の外に広がっているのに、城の中で過ごすなんて、と｣
ああ、違う。
この人は、私とは違う。
勇気があって、信念があって、自分の、意思がある。
閉じこもり、自分を押し込めていた私とは、違うのだ。
｢その時俺は、一人の友人ができました。城の者ではない、友人が。……その友人は、俺を“王子”ではなく、あくまで“友”として向き合ってくれた。その友人のおかげで、進めた道があります｣
微笑むゼンどのの瞳は、真っ直ぐに前を向いていて、凛々しく、美しかった。
｢俺は、自分が思っているよりも、友に恵まれていたんです。常に、道を正してくれる友が隣に居たから、俺は兄上と自分を比べずに、俺自身の考えで動けるようになったんです｣
｢……っふふ。……羨ましい、ですね｣
｢？｣
｢ゼンどのが、羨ましいです。……私は、自分で動くことをしなかった。自分から世界を閉ざし、広げなかった。……いいえ、広がっている世界を、否定していました｣
｢Aどの。……それなら、これから広げていけばいいではないですか。クラリネスという国も、アルベール王国という国も、これから見つめていけば良い｣
この人は、何故こんなに優しい眼差しで話せるのだろう。
ゼンどのの言葉が胸に響く。
じんわりと染み渡るその感覚は、とても心地好かった。
｢ありがとうございます。ゼンどのは、すごい考え方をするのですね｣
｢え……｣
｢？｣
ゼンどのは驚いたような顔をしたが、懐かしむように、笑った。
｢城の外で出会った友人にも、同じ事を言われた事があります。……でも、これは考え方じゃない。生き方、ですよ｣
誇らしげに笑うゼンどのに、思わず笑みがこぼれた。
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ゆきな☆(プロフ) - 更新頑張ってください！楽しみに待ってます！ (2020年4月20日 20時) (
レス) id: eaaa1b941d (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 音織さん» 更新が遅くなって申し訳ないです。ゆっくり更新ですが、頑張りますのでよろしくお願いします。 (2018年8月30日 21時) (レス) id: c51862496b (このIDを非表示/違反報告)
音織(プロフ) - 初めて！音織です！いつも読ませて頂いてます！久しぶり更新嬉しかったです！無理せず更新頑張って下さい！ (2018年8月30日 1時) (レス) id: 7413fe4c64 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 天泣tenkyuさん» 文章を褒めていただけて、すごく嬉しいです！ありがとうございます。更新頑張ります(^^*) (2018年1月11日 17時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
天泣tenkyu(プロフ) - 文章などが凄く好みで楽しく読ませていただいています！無理なく更新がんばってください(´ω` ) (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6a5dbc60dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くるみ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月3日 15時
