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第6話 ページ8

夜。


すっかり陽は沈み、辺りが暗闇に包まれた。


あるのは城に点いた灯と、淡く夜の闇を照らす月のみ。


……夜は、あまり好きではない。


だって、果ての無い闇が続くのは、見えないけど確かにそこに在る“何か”に閉じ込められて、光を奪われた様な感覚に陥ってしまうから……




コンコン。


響いたのは扉を叩く音で、来客が来たこと、そしてこの夜闇の中の存在が自分独りでは無いことを告げている様だった。


微かな安堵を感じ、落ち着いた自分の心の弱さを感じながらも、ゆっくりと開かれる扉の向こうの人物を迎える為に立ち上がる。


「遅くなってしまい、申し訳ない」

「いえ、お気になさらずに」


廊下の、まだ肌寒く感じる夜の冷気とともに入ってきたのはゼンどのだ。


お昼頃に話をした後、新しい仕事が入ったらしく、結局会うのはお互い夕食を食べ終えた後になってしまった。


「執務が、お忙しいのですね」

「戴冠式もありますし、仕方の無いことだと思っています。……それに、自分の仕事ですから」

「ゼンどのは……自分の立場が、嫌になったことはないのですか?……生まれてから、王子だからと教育を受けさせられ、他人との関わりを持ち、皆から対等には感じてもらえない、自分の存在が……」


ここまで言って、自分の言葉が、本音が失言であったことを感じた。


「あっ、ご、ごめんなさい……変なことを言ってしまって……」

「いえ、大丈夫ですよ」


ゼンどのは気にしないように、にこやかに笑ってみせたが、その前の一瞬、驚きと悟りとが混ざったような表情をしたのを私は見た。


言っていいはずの言葉では、なかった。


これまで自分の数多くの失言等、言動で、どれだけの人に迷惑をかけてしまったか。


ここでは、新しく迎えてくれた人たちの前では、もうあんなことを繰り返さないように……そう、心に誓ったはずだったのに。


「Aどの、立ち話もなんですし、座りましょう。……今日は、これと言って話す内容を決めていなかったんです。ただ、貴女と話してみたいと感じただけだったので……」


否定される。


そう、思った。


柔らかな言葉で話を紡ぐゼンどのの口からは、否定の言葉が溢れて来る、と。


私の立場を、イザナどのと、この国とのこれからの関わりを、私の、存在を。


「……でも、ますます貴女と話してみたくなりました。Aどの、貴女は俺と似ているようです」


だから、笑うゼンどのの言葉の意味が、私には分からなかった。

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ゆきな☆(プロフ) - 更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2020年4月20日 20時) (レス) id: eaaa1b941d (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 音織さん» 更新が遅くなって申し訳ないです。ゆっくり更新ですが、頑張りますのでよろしくお願いします。 (2018年8月30日 21時) (レス) id: c51862496b (このIDを非表示/違反報告)
音織(プロフ) - 初めて!音織です!いつも読ませて頂いてます!久しぶり更新嬉しかったです!無理せず更新頑張って下さい! (2018年8月30日 1時) (レス) id: 7413fe4c64 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 天泣tenkyuさん» 文章を褒めていただけて、すごく嬉しいです!ありがとうございます。更新頑張ります(^^*) (2018年1月11日 17時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
天泣tenkyu(プロフ) - 文章などが凄く好みで楽しく読ませていただいています!無理なく更新がんばってください(´ω` ) (2018年1月10日 22時) (レス) id: 6a5dbc60dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月3日 15時

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