第109話 ページ6
｢しまった。そういう狙いか……｣
ボソッと呟くオビの声
どういうことか、私が聞こうとする前にオビは
｢ごめん、A嬢。向こうまで行くから、人が多いけどついて来てね｣
と言い、会場の反対側を指した
｢分かった｣
そう返事した私は右手のオペラ･グローブ(肘上や二の腕あたりまでの長い手袋)を外し、しっかりとオビの手を握った
それを確認したオビは人の間をスルスルと歩いていく
私も駆け足気味にオビの後を追うと、気付いた時にはもう人混みを抜けていた
｢大丈夫？A嬢｣
｢うん、平気。
それより何だったの？“そういう狙いか”って｣
｢ああ、それは……確信が持てるまで、もうちょっと待っててくれるかい？｣
｢うん……分かった｣
オビが濁した返事をするのは珍しくて
冗談めかして言ってるわけでもないから何となく、不安を感じたけど、オビは信じられる人だから、信じて良い人だから、それ以上は深く考えなかった
｢A様｣
不意に敬称で呼びかけられ、また何処かの令嬢かと思いながら振り返ると、そこに立っていたのはクロードさんだった
｢どうですか、楽しんでいただけているでしょうか｣
｢はい、勿論です｣
さっと右手のオペラ･グローブを直しながら言う
｢それはよかった。飲み物などいかがですか｣
｢ありがとうございます｣
差し出された飲み物のグラスを受け取る
クロードさんはオビにも同じものを渡してからゆっくりとその場を後にした
渡されたグラスに口をつけようとした時、不意に嗅ぎなれない臭いがして顔をしかめたが、直ぐに理由に気付いた私は、オビに小声で呟く
｢オビ、飲まないで｣
寸前で手を止めたオビはグラスから口を離してこちらを見た
｢何かあった？｣
｢うん、このワイン、絶対に飲まないで。
ほぼワインの香りで隠されてるけど、何か入ってる｣
｢何かって、ヤバイやつかい｣
｢わかんないけど、いいものじゃ無いだろうね｣
この夜会は、何かが仕組まれている
それの原因が何かは知らない
でも、恐らく私なのだろう
それだけは、何となく分かった
｢大丈夫。大丈夫だよ、A嬢。言ったでしょ、俺が守るって。
ちゃんと俺たちの居場所に帰ろう｣
｢うん｣
オビの言葉が響いてくる
私たちの居場所
主である、ゼンとイザナ殿下の下に帰るために
何があっても立ち向かおう
これからも、オビの隣に居るためにも
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ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです！よろしくお願いします！まじで大好きです！ (2022年7月8日 17時) (
レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります！！お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています！！ (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます！ (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです！！！続き、楽しみに待ってます！頑張ってください！！ (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くるみ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年8月21日 18時
