第118話 ページ15
正直、怖かった
今まで、いろんな理由で幾度と無く命を狙われてきた
でもそれは、山の中に建つ、家族との思い出が詰まった場所から私が一歩、外に出たときから覚悟はしていた事だった
だから、実際今まで命を狙われようと恐怖したことはあっても、怯えることは無かった
それがどうしてか、今更怖いと怯える事になるとは思わなかった
理由は、自分でも薄々分かっていたのだ
でも目を背け、自分に言い聞かせていた
縋り付いてはいけない、と
私はイザナ殿下に出会って、城に仕えて、ゼンの従者になることを願い、誓った
二人の王子にこの命を捧げたのだ
でも、その場所で出会ったのは、オビという人物
私の心は、彼の隣に居たいと望んだ
決して王子たちはそれに反対しないだろう
でも、彼はそれを望むのか、彼の隣に居ることは私に許される事なのか
そうして自分で自分を追い詰め、好意を無いものにしていた
生にしがみつき、自分の剣が錆びぬように
死に怯え、自分という剣が折れぬように……
でも、生にしがみつき、縋り付いた先に在る自分は、きっと生きるために戦えるのだ
自分を生かす為に、仲間を守る為に、これからも、この世界に在る為に……
｢クロードさん、私たち招待客はこの後帰るだけ……ですよね？｣
｢はい｣
｢でも、ワインに何かを仕込むぐらいだし、そう簡単に帰してもらえるかねぇ｣
オビが目を細めながら呟く
｢ねぇ、オビ。……オビなら、どうする？
オビなら、どうやってこの状況で私を攫おうとする？｣
｢……まず、他の招待客に見られるのは絶対に避ける。
あんまり傷も付けたく無いだろうから……睡眠薬で眠らせる……とか。
まあ、そうなると確実に俺とA嬢は離されてるだろうね｣
｢そっか……真実を確かめたければ、多少の危険は覚悟しなきゃ、ね……｣
｢A様……｣
｢よし、時間が無いから、動こうか｣
｢時間が無い……？｣
｢はい。儀式をしに、森へ帰らなくちゃいけないんです。
私は、母様の、代々やってきた長としての仕事を継ぐって決めましたから｣
私の言葉にクロードさんは目を潤ませ、それでも涙を堪えながら、ひしひしと喜びを噛み締めるような顔をしていた
｢で、A嬢、具体的にはどうするんだい？｣
｢ちゃんと吐いてもらう為には、向こうにも事を起こしてもらわないと。
暫く様子見。でも、ちょっと賭けをしてみようかな｣
私たちが部屋を出た頃、太陽は真上に昇る二時間程前だった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです！よろしくお願いします！まじで大好きです！ (2022年7月8日 17時) (
レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります！！お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています！！ (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます！ (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです！！！続き、楽しみに待ってます！頑張ってください！！ (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるみ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年8月21日 18時
