第１話 唐突な出会い ページ2
第１章 夕暮れと絵画
１、唐突な出会い
頬を掠める様な柔らかい夕暮れの春風が私の髪を揺らした。胸元の綺麗な青いリボンも揺れている。新品の制服に、ピカピカの靴。はたから見れば期待に満ち溢れている新入生に見えるだろう。だが、私は立派な高校２年生だ。それは私の胸元のリボンがしっかりと証明している。私が昨日から通うことになったこの高校、私立光陰高校は学年ごとにリボンの色が異なる。ちなみに１年生は黄色、２年生は青、３年生は赤のリボンを付けることになっている。なので高校２年生の私は青のリボンを身につけているというわけだ。しかし、高校生といえば基本的に毎日制服登校なので、２年間も制服を使っていればしわのひとつくらいできるはずだ。だが、私の新品のピッカピカの制服にはシワはおろか、ホコリすらついていなかった。なので周囲の生徒に奇異の目で見られていた。おそらく、見慣れない顔だからという理由と制服が綺麗過ぎて目立っているのだろう。あぁ、こんなに気持ちのいい夕暮れなのになぜ、奇異の目で見られなくてはならないのだろう…薄々気づいた人がいるかもしれないが私は転校生だ。親の仕事の都合、というやつだ。母親は通訳家、父親は翻訳家だ。まさに世界を繋ぐ仕事をしている。しかし、娘の私の英語の成績は…。まあそんなことは置いといてこの度、父と母がアメリカでしばらく仕事をすることになり、ついていくわけにも行かずこの寮付きの高校に転校してきたというわけだ。普通、転校生といえば漫画の中では質問攻めにあい、イケメンの男の子が助けてくれてそこから青春ラブがはじまる…！ような展開なのだが、私の場合は質問攻めにあうでもなく、イケメンに助けられるでもなく、話しかけられるでもなく、興味をもたれるでもなく静かに一人で転校初日を過ごした。まあその方がある意味では楽なのかもしれないけど。と、そんな事を考えながら帰路の道を歩いていると曲がり角で誰かと衝突してしまった。
「ご、ごめんなさい…！ぼーっとしていて。」
私がとっさに謝ると、その人は
「私こそごめんなさい！よく前を見ていなくて…。」
と私に謝った。その人は私が立つのを手伝ってからすぐに会釈をして走っていってしまった。なんかあの人すごく急いでいたなぁと思いながら私は制服についた汚れを落とした。ロマンチックでも、運命的でもなんでもないがこれがのちに私のパートナー的存在となる小松との出会いだったのである。
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作者名：ゴンザレス | 作成日時：2015年7月13日 19時
