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◆狼種の少年 2 ページ30

私は、彼が生きるために必要で盗みに入ったのだとばかり思っていた。そして、死にたくないから、私を人質にしてでも逃げたいのだとばかり思っていた。



でも、そうじゃないのだろうか。彼の言葉はただの強がりといった風には聞こえなかった。
淡々と、そっけないからこそ、本当に彼が自分自身の命にすら興味がないのだとわかる。



『あなた……、一体何なの? どうして、ここに忍び込んできたりしたの?』



?「……オマエには。関係ない。」



『あるわよ。』



大いに関係ある。不法侵入者である彼に、こうして引っ張り回されているのだ。関係ないなんてことはない。



ワンッワンッワンッ!!



?「……チッ。」



犬の吠える声と追手の足音が近くなる。これではもう、逃げるのは無理だろう。彼はここで、追手を待ち構えるしかない。……と、思っていたのだが。



?「来い!」



『え……!?』



彼は再び私の予想を裏切ってくれた。私の手を引いたまま、塔の中へと飛び込んだのだ。



―――――



騒動を聞き付けて使用人のほとんどが外に出てしまっていたのか、塔の中に人の気配はない。



『あなた……っ、何を考えてるの!?』



塔の中に逃げ込むなんて、より逃げ場を失っているだけだ。



?「これで、いいんだ。」



『いいって……!?』



何がどういいと言うのか。何を考えているのかが、全く理解できない。
私たちは追い立てられるままに、塔の上へ上へと駆け上がっていく。



『……っはあ、はあ……!』



?「はぁ……!」



息が弾む。以前メイドさんと塔の螺旋階段で駆け比べなどをしたこともあったが、今回は庭からの全力疾走だ。さすがに苦しい。



―――――



最終的に、私たちが辿り着いたのは塔の最上階にある私の部屋だった。これ以上は逃げようにも、逃げ場がない。



?「こっちに来い……!!」



『こっちって……、そっちは窓よ? 窓の外には足場もないし、逃げ場なんか……。』



?「いいから、こっちに来い!!」



『きゃ……っ!!』



どうするつもり?



空でも飛べない限り、逃げ場はもうない。



……窓? まさか本当に、空でも飛んで逃げるつもりなの?



私の部屋には、塔から外に出ることの出来ない私の気がまぎれるようにと、大きな窓が部屋のあちこちについている。彼が開け放ったのは、敷地の外に広がる森を見渡すことの出来る方の窓だった。

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フフカ - はい!まってます今日もご苦労様でした。(^∀^#← (2016年4月13日 5時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます! そうです、前とは少し内容を変えて書いてみました!! よくわかりましたね(^○^) これからも頑張りますので楽しみにしていてください!!! (2016年4月12日 22時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - こんなに遅くからご苦労様です なんとなく今日も来ちゃいました!似ている小説だけど前とは違うので読んでます前より詳しく書いてあるのでとても分かりやすいです(#°∀°♭ 明日もまってまーす(笑) (2016年4月11日 22時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます! 頑張ります(^○^) (2016年4月10日 20時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - 分かりましたありがとうございます誰オチにするか決まったら教えてください これからも毎日応援してます!!ガンバデス (2016年4月10日 19時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヒメア | 作成日時:2016年3月9日 20時

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